その日の夜、ハリーとハーマイオニーとネビルが罰則のため禁じられた森へと行ってしまった。 レーナとロンは三人が帰ってくるのを待つため談話室に居た。分厚い参考書を読むも、眠気が襲ってきて頭に入らない。それもそうだ、今の時間には二人以外誰も談話室に居ない――深夜だからだ。 前後に揺れる頭を必死に正しながら本に目を向ける。しかしもう限界だった。ロンが何かを話し掛けてくるがレーナは我慢できなくなり目を閉じた。 「――起きて。…起きなさい、レーナ!」 スパーンと頭を叩かれ、身を縮こませるようにして飛び起きた。灯りが無くなり、真っ暗な状態の談話室。いつの間にか同じように寝てしまっていたロンも叩き起こされ、二人は禁じられた森でのことを話し始めた。 「スネイプはヴォルデモートのためにあの石を欲しがった……きっと森の中で待ってるんだ。最初はお金の為だと思ったけど ……」 「その名を呼ばないで」 ロンがヴォルデモートに見つかるのを怖がるかのようにこわごわと言った。ハリーはロンの言葉に一切耳を傾けることなく続けた。 「ヴォルデモートがやってきて僕の息の根を止める……きっとそうなん だ…」 恐怖に顔が青く染まる。レーナはハリーの肩をできるだけそっと優しく抱くと、慰めるように言葉を紡いだ。 「ハリー、あなたは一人じゃないわ。頼りないかもしれないけど私達だっている、それにダンブルドアだって…」 「うん……」 こてん、と肩に頭がのせられる。それに頬を寄せると、レーナは大丈夫、大丈夫よ。と囁くように呟きかけた。 その後も話を進めていると、いつの間にか空が少しずつ明るくなってきていたので、四人は話を止めて床にふせた。 数日が経ちようやく学年末試験が始まった。噎せ返るような暑さの中、レーナ達は必死に羽ペンを走らせていた。 実技試験はどれも楽にできた。パイナップルを机の端から端までタップダンスさせたり、ネズミを嗅ぎたばこ入れに変えたり。魔法薬学では忘れ薬を作らされたが、自分で言うのもなんだが良い出来だった。 今現在行われているのは魔法史のテストだ。どうして一番苦手なものが最後なのだろう。心の中でグチグチと文句を言いながら答えを書いていく。セドリックと勉強したかいもあり、答えはスラスラとでてきた。 終了のベルが鳴ると、生徒達からは歓喜の声があがった。結果が楽しみだわ、レーナは満足げに微笑んだ。 ハリー達三人は湖の方まで行くようだったが、毎日夜中まで勉強をしていたレーナは一刻も早く睡眠を撮りたかったので寮に帰ることにした。布団を被り、目を閉じるとあっという間に意識が飛んでしまった。 目を覚ましたのは、夜遅くになってからだった。夕食の時間も、セドリックとの勉強の時間も過ぎていた。すいているお腹をさすり、部屋を見渡すと、ベッドにハーマイオニーの姿がなかった。もしかして何かあったのだろうか。馬鹿みたいに寝ていた自分に後悔しながら談話室に向かうが誰も居なかった。…どうすればいいのだろうか。レーナが談話室をグルグル歩き回っていると寮の扉が開いた。 そこにはハーマイオニーと少し怪我をしたロンが居た。 「ハーマイオニー!ロン!…どこに行ってたの?」 「ええと…詳しく話すと長いわよ」 「全然大丈夫よ」 じゃあロンは寝るのよ。私がこの子に部屋で教えるから。レーナはハーマイオニーと自室に戻った。 「……そんな事があったのね。ところで、ハリーは?」 「医務室で寝てるわ」 「じゃあ無事なのね。それは良かったわ」 自分が寝ていた間にそんなことがあったとは思いもしなかった。話を聞くと自分はもしかして必要のない人なのかもしれない、と自嘲してしまった。しかしそんなことはおくびにも出さないように話を続ける。 「じゃあ、お見舞い行かないとね」 「ええ、行きましょう!きっと喜ぶわ」 「うん。…それじゃあそろそろ寝ようか。ハーマイオニーも疲れてるでしょ」 ベッドに入ると直ぐに聞こえてくるハーマイオニーの寝息。しかしレーナは寝れそうになかった。 学年末パーティーはスリザリンカラーで一色だった。三人は自分達の所為でグリフィンドールの優勝を逃してしまったことを申し訳なく思っているようだった。 しかし、ダンブルドアが三人に加点をしてくれたおかげで、グリフィンドールは一気にスリザリンと同点の1位になった。そして、ネビルの活躍に十点が加えられた。――グリフィンドールの優勝だ。 大きな歓声が上がった。大広間はスリザリンカラーからグリフィンドールの赤色に変わった。 「みんな良かったね」 大いに盛り上がったパーティーも終わり、試験の結果が発表された。 結果は次席だった。もちろん主席はハーマイオニー。足を引っ張った教科はこれといってなかったが、彼女の方がレーナよりも全体的に勝っていた。 「…来年は私が勝つからね」 そう宣戦布告したレーナにハーマイオニーは勝ち誇った笑みを見せた。 ホグワーツ特急には四人で乗った。事件のおかげというべきか、四人の仲は確実に前よりも深まっていた。 キングスクロス駅に到着したみたいだ。荷物を持ち、特急から降りる。 「手紙書くからね、待ってて」 「もちろんよ。楽しみにしてる」 三人とハグを交わすと、レーナは手を振り父親を探しに行った。 「…父さん!」 壁に寄りかかっていたルカを見つると、一目散に駆け寄った。 「おかえり、レーナ」 目線を合わすためにしゃがんでいるルカにそっと抱き着く。いつもなら絶対にしないが、久しぶりに会ったことで嬉しさのほうが強かったみたいだ。ほっぺにキスをすると、そこには驚いていた顔の父が居た。 「ただいま」 差し出された手を握り、二人は我が家へ帰った。 |