短いクリスマス休暇が終わった。結局、母が帰ってきたのは休暇が終わる三日程前だった。何処へ行ってたの?誰と居たの?と聞くことはできず、挨拶を交わすくらいで会話という会話はできなかった。

父とキングスクロス駅まで送ってもらい、ホグワーツ特急に乗り込む。
今回も早めに乗ったおかげかコンパートメントは確保できた。暇なのでハーマイオニーに貰った本を読む。それは、もう休暇の間に何度も読んでしまっていたが、レーナは飽きることなく何度も読んでいた。
――コンコン。扉が二回叩かれた。本を読んでいた顔をあげるとそこにはレーナが待ち焦がれていた人が居た。

「ハーマイオニー!」
「久しぶりね、レーナ。元気そうで何よりだわ」

軽くハグをかわし、休暇前よりも少し大人っぽくなった彼女をコンパートメントに招き入れる。

「プレゼントありがとう。あのお菓子、とても美味しかったわ」
「それはよかった。ハーマイオニーがくれた本も分かりやすかったわ」

二人が休暇にあったことを話していると、ハーマイオニーは目敏くレーナの右耳に光るピアスを見つけた。

「ピアス開けたのね。とても似合ってるわ」
「ありがとう。これ、兄さんがくれたの」

ハーマイオニーの言うとおり、そのピアスはレーナのグレーの髪やきめ細やかな白い肌にとてもマッチしていた。
一切痛くなかったわけではないが、こう褒められると開けてよかったと思える。レーナは両の口角をあげて笑った。


ホグワーツに着くと、談話室にはアンジェリーナやアリシアが居た。二人はレーナに気づくと、パッと顔を綻ばせた。


「ハイ、レーナ!」
「久しぶりね」
「久しぶりだね、二人とも」

一旦寮に戻り荷物を置き、談話室に戻る。三人は休暇中の話でキャッキャと盛り上がった。やはりというか、二人はレーナにセドリックのことを聞きたがった。

「レーナ、ディゴリーからは何貰ったのよ」
「えっと、…ピンクのバレッタ」
「え、そのピアスじゃないの!?」
「これは兄さんに貰ったの」

期待はずれだとでも言うかのようにガッカリされる。そんな顔をされてもレーナにはどうしようもなかった。
レーナ達が話をしている最中、ハリー、ロン、ハーマイオニーはこそこそと何か分からないが話をしていた。その事が気になりながらも、聞けない自分がやるせなかった。


新学期が始まり、またいつも通りの日々が始まった。ハーマイオニーと朝食を食べ、授業を受けてセドリックと図書館で勉強する日々が過ぎていった。



「レーナ、次はどうしたらいいんだっけ?」
「次は、ゆでた角ナメクジを切るのよ」

ネビルが不安げにこちらを見つめてくる。先ほどスネイプが言っていたことを、間違えずに伝える。
時々ネビルを確認しながら、自分も調合を進めていく。

できた魔法薬をスネイプに提出する。レーナ以外の生徒はまだ作り終えていないようだった。スネイプはそれの臭いを嗅いだり混ぜたりして出来を確認している。

「ふむ、よくできている」

限りなく小さく、レーナ以外の人には聞こえないような声でスネイプはそう言った。

「ありがとうございました」

その御礼の持つ二つの意味をスネイプが理解したのかは分からないが、周りに不審に思われない程度に頷いてくれた。それが嬉しくて微笑むと、隣のネビルが首を傾けた。



クディッチの日程が決まった。グリフィンドールでは、ハッフルパフ戦の審判がスネイプになったことで話題は持ちきりだった。レーナは文句を言っているグリフィンドール生を尻目に、図書館に向かった。

「そんなにスネイプ先生が審判になるのが嫌なのかしら」

頬杖をつきながらレーナはぽつりと呟くように言った。別に返事が欲しかった訳ではないが、彼が無視をするはずもなかった。

「スネイプ先生はグリフィンドールが好きじゃないみたいだからね。僕もスネイプ先生が審判は嫌かな」
「どうして?」
「なんだか無駄に緊張しそうでね」
「……もしかしてクディッチしてるの?」
「うん」

因みにシーカーだよ、なんという爆弾発言だ。全然知らなかった。レーナはセドリックのことをだいぶ知ったつもりで居たのでとても驚いていた。

「じゃあ……敵ね」
「レーナが敵なのは嫌だなぁ」
「ハッフルパフは応援できないけど、セドリックのことは応援するわ」
「それは嬉しいな」

目を細くしてはにかまれる。何だか恥ずかしいことを言った気がしてきた。赤く染まった頬を見られないように、レーナは下を向いた。



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