時はというモノはあっという間に経ち、クリスマス休暇となった。
レーナはハーマイオニーと共にホグワーツ特急に乗り込んだ。
無事にコンパートメントを確保すると、車窓からの風景を眺めながら出発するのを待つ。

「…あっという間だったね」

それはハーマイオニーに向けて言ったわけでもなく、独り言のつもりでもなかった。思わず口からポロリとでた言葉だった。

「そうね。この調子じゃ、卒業もあっという間に来そうね」

フフッと顔を綻ばせるハーマイオニーにレーナもつられた。
――九月に此処に入学し、グリフィンドールに組分けされた。十月のハロウィンではトロールと戦い、十一月にはハリーがクディッチの初試合でスニッチを掴み勝った。他にも色々なことがあった。グリフィンドールの上級生とも仲良くなり、セドリックとも仲良くなることができた。とても濃い三ヶ月少々だった。
レーナが回想していると、ようやくホグワーツ特急は動き始めた。

「ずっと思ってたのだけど、レーナは何処の国の人なの?クルーガーなんて苗字、イギリスでは聞かないわ」
「ドイツだよ。一応ドイツではポピュラーな苗字の一つなんだよ」
「そうなの?私、ドイツに行ったことはないの。…いつか絶対行くわ!」
「その時は、私が案内するわ」

自分の住むローテンブルクを思い出す。「中世の宝石箱」と称される、中世の街並みがそのまま残るメルヘンな都市。早く自分の故郷に帰りたい、自分の家に帰りたい。一度そう思うと、早く帰りたいという気持ちはどんどん膨らんでくる。レーナはせわしなく車窓に目を向けた。


「ちょっと出てくるわ」

そう言うとハーマイオニーはコンパートメントから出ていった。レーナは車内で魔女のおばさんから買った蛙チョコを開けると、逃げられないうちにパクっとそれを食べた。
…それにしても帰ってくるのが遅い。レーナはおおかたトイレに行っているのだろうと予想していたが、余りにも遅い。心配したレーナがコンパートメントから出ようとすると、扉が勝手に開いた。

「…やあ、レーナ」


色々と思うところはあったが、レーナはセドリックをコンパートメントに招き入れた。

「…どうかしたの?わざわざコンパートメントに来るなんて」
「特にはないよ。ただ、暫く会えなくなるから…君の顔を見にきたんだ」

どうしてそんな事を恥ずかしげもなく言えるのだろう。彼はもしかすると相当な女たらしなのかもしれない。
しかし、迷惑だったかな?と眉を寄せ、不安げにこちらを見つめてくるセドリックは、どうみてもそうは見えなかった。

それから暫く話をしていると、扉が開きようやくハーマイオニーが帰って来た。ハーマイオニーはレーナとセドリックを見ると、邪魔をしてしまったと思ったのか、申し訳なさそうにしていた。

「じゃあね。手紙出すよ」
「うん、待ってるね。バイバイ」

セドリックはハーマイオニーが帰って来たことで、自分も帰ることにしたのか手をヒラヒラと振ると、彼はコンパートメントから出て行った。

「…邪魔してごめんなさいね」
「気にしないで、大丈夫だから」
「さっきの人、セドリック・ディゴリーよね?付き合ってるの?」
「付き合ってないわ!…彼、そんなに有名なの?」
「もちろんよ!」

ハーマイオニーは、セドリックのことをペラペラと喋りだした。
頭良し、性格良し、顔も良し。三拍子揃っていて、なおかつ今年からはハッフルパフのクディッチのシーカーも務めている通称「ハッフルパフの王子様」だそうだ。

「あなた、そんな事も知らないの?」

腰に手を当て、やれやれと首を振るハーマイオニーにレーナは何も言えなかった。

「これから知っていくから、いいの!」

何だか自分が知らないことをハーマイオニーが知っていてモヤモヤしたレーナは語尾を強めてそう言った。そんなレーナを見ると、ハーマイオニーはクスリと笑った。

「ヤキモチ焼いてるのね、レーナ」
「そんな事ないわ」

キッと笑うハーマイオニーを睨む。
どうして私がヤキモチを焼くのよ。彼と付き合っているわけでもないのに。

「まあ、そういう事にしておくわ」

温かい目で見てくるハーマイオニーと目線を合わせないよう、レーナは窓に映る風景に目を向けた。



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