「ごめん、ごめんな千歳、オレどんどんカッコ悪なってる」
「どげんしたと?」
「やってオレ弱々やん、中高生んころは完璧やったのに‥‥」
「いまもそっちゃろ、外では完璧たい」
くらはほんにガス抜きが下手やねぇ。俺ん前くらい、力ば入れんでよかとに。
体育座りでもじもじしながら、唇ば尖らして言うんがそげなこつて、たいがむぞらしかばい。
今日の仕事でも、二十八歳っち若さでひとつの部署まとめてしっかり勤め上げて帰ってきたくら。
玄関入った瞬間だらぁんと転がるけん、体調悪かとやっち聞いたっちゃけど、ちとせ〜寂しかった〜ち両手広げるだけ。
飲み会で帰りば遅くなったんが応えたようばい。むぞらしかろ?
ばってん後悔ばして、小さか声でごめん、て謝るんが毎回。謝らんでよかとよっちなんども言うたんも聞かん。
「好きなこの前じゃ見栄張りたいんが男やねんか」
「俺んこつ? 好きなこには頼られたいんも男ばい」
「‥‥‥‥せやけど」
「だけん今までどおり外ばおるときは完璧で、俺ん前では本物のくらば見せなっせ」
「それヤな女のすることやん‥‥幻滅せぇへん?」
「嫌な女は男ん前でよか顔ばすっとよ、逆たい」
「けど‥‥」
「幻滅せんよ、俺ばっかしが他ん奴ば知らんくら知っとうの、嬉しか」
「ごめ、ごめんなぁ千歳、オレ、千歳ん前じゃいっちゃん気張りたいのに気張れへんねん、力、抜けてまう」
「その調子ばい」
俺にしか見せたらいかんばい。その涙目も、セットの崩れた髪も、よれたスーツも全部ぜんぶ。
「やっぱ千歳は男前やなぁ、敵わんわ」
‥‥こんな狭量、くらにだけは知られとうないっちゃ。
(むしろ、弱っているときの方が好きだったりして)
__120718
千歳のグッズ、なんで出ないんだろ‥‥。
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