多忙の身であるディーノの行動は、いつも突然だ。
「恭弥恭弥、それでさーツナが‥‥」
仕事が漸く一区切りついたからと雲雀に連絡が入ったのが先週。イタリアから、大量の部下と土産をこさえてきたのは数時間前のこと。
「なぁもうホテル行こうぜ」
「恭弥ぁ、もう待てねぇよー」
「おーい恭弥、なぁなぁ」
呼んでもいないのにいきなり来て、頼んでもいないのに勝手に待ち、挙げ句ごねる歳上の男に雲雀がキレないはずはない。
けれど、トンファーを拾い上げたところで笑んだ歳上男はへらりと言い放つ。
「明日、本気出してもいいぜ」
「‥‥うそ、ついたら、咬み殺すから」
「おう! 男に二言はないぜ」
そうしてまんまと乗せられる形でホテルに来てまだ一時間足らず。目的が有って訪れた部屋ではないが、ディーノはあまりにだらだらと、しかも雲雀からしたら興味の全くない話しを続けるのに辟易とする。いつもそう、ディーノはイタリア男の性なのか誉め言葉は惜しまない、その延長かよく喋る。
自分の近況報告のあとは部下の話。それから弟分の話、終わればその友達へと話は移り。
延々とループは終わらない。
「その話もう聞いた」
「そだっけか?」
「そう」
「うーんじゃあ‥‥あ、そういや」
ぶち、と雲雀のこめかみ辺りで音にならない音が鳴り、ついに雲雀の堪忍袋の緒が切れたらしい。
ディーノの襟首を勢いよく引いたかと思えばむちゅ、と唇に、雲雀の唇が押し当てられる。
「少し黙れないの」
ラグの上だったにも関わらずがつり、と音がする勢いでディーノを押し倒し。その上に乗ったかと思えば、ごそごそと腕をずらすとすぐさま上から降り、その腕に頭を乗せた。
展開に対応しきれないディーノは身動きひとつとれずに目を瞬かせている。
「僕は寝るから、邪魔、しないで」
巣作りののち、あっという間に眠った雲雀の隣で声にならない叫びを堪えていたとかいなかったとか。
(ちょ! 恭弥何可愛すぎるだろなんだこいつ‥‥っ)
(つーか恭弥からキスとか初めてじゃん!)
(やべー盛り上がる、けど、恭弥ガチ寝ッ)
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