昨日、いつも通りフランをバイト先まで迎えに行った。いつも通りを装っているようだったがフランの顔は青ざめていて、どうかしたかと覗き込んだがフランは逃げるような勢いで帰って行った。
 フランのバイトが休みな今日、仕事早々に切り上げ(作るだけ作ってあとは口も声もうるさいマネージャーに任せた)フランの家に向かう。
 アパートの下に着き門をぐぐると、あの、と声を掛けられ振り向けば見覚えのある女子だった。フランといつも、店に来ていた‥‥。

「フランの、お友だち?」

「‥‥まぁ」

「最近フラン元気なくて、心配で、甘いもの好きだから、これ」

 たどたどしく喋る彼女はコンビニの袋をベルフェゴールに押し付けて、蚊の鳴くような声でお願いしますと言ったあと、顔を真っ赤にして踵を返すと小走りに去って行った。
 仕方なく、受け取った袋を手に扉をノックをするが返事はなく、ノブを回したら鍵は掛かっていなかった。何があったのかと逸る気持ちを抑え部屋に押し入る。

「フランっ」

「‥‥あ、えと、あれ‥‥?」

「なんだよ、居んじゃねぇか‥‥返事しろっつーの」

 どうしよう、と顔に書いてある。では自分が下で、先の彼女と遭遇し話していたことを知ったらフランは、どうするのだろう。
 ハの字に眉を歪め唇を噛む姿が、ベルフェゴールの逆鱗に触れた。

「‥‥お前、俺に隠してることあんだろ」

「っ‥‥ちが、その、」

「へぇ、隠してるっつー自覚はあるわけだ、‥‥で?」

 何が違うって、と尋ねるベルフェゴールは、ベッドに座っていたフランににじり寄り、あっという間に組み敷いてしまう。ふと上げた視線の先、捉えたのは入学式の写真なのかフランと、先ほどの彼女とで写っていて。
 拘束した手首にじりじりと力が籠もる。

「いつか、言わなきゃって、思っ‥‥でも、っ」

「バレるまで黙ってるつもりだったってか? そのいつかに言われた俺はどうすりゃいいんだよ」

「ごめ、ごめ、なさい‥‥っ」

「‥‥もういいや、何か疲れたし」

「っ聞いて、聞いてください、嫌いになってもいいから、‥‥お願い、します」

 溜め息をひとつベルフェゴールが漏らすと、フランは大袈裟なくらいにびくりと肩を震わせた。
 そのままの体勢で、半ば泣きながらフランは話しはじめる。

「ミーには、親がいません」

「は?」

「こんな、ミーなんて、センパイには釣り合わないってわかってたけど、でも、離れたくなかったから言えなくてっ‥‥、っ」

「え‥‥」

 涙でぼやける視界でも、ベルフェゴールの金髪はきらきらと目に痛いくらいに輝いていて。
 この輝きこそが差なのだと見せつけられているようでつらかった。







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