社会人ベル×大学生フランパロ
(割と続く予定です。全6話?)



 出逢ったのは共通の友人がいたからで、打てば響くような会話が互いに気に入って気付けばふたりで会う回数も増えていた。
 そうは言っても、フランは大学生でベルフェゴールは社会人、自宅同士が遠くないだけでとびきり近いわけでもない。
 ただ週に少なくとも一度は約束して、居酒屋だったりファミレスだったりで夕飯を共にする。今週はもう二回目。週末の賑わった店内、淡いオレンジの照明がフランの輪郭をぼかす。

「ベルせんぱーい」

「何、カエル」

 あだ名の理由はフランの携帯が黄緑色だったことと、カエルのストラップがぶら下がっていたこと。
 いつもなら、カエルと呼ばれると機嫌を損ね、唇を尖らせるフランだが。視線を合わせたベルフェゴールから逃げるように顔を伏せたかと思えば酒でほんのり朱に染まった頬と潤んだ瞳でベルフェゴールを捉える。

「せんぱい、ミーとおつきあい、しましょ?」

「‥‥なんで」

「だってせんぱい、いつもあまくっていいにおいがするんでー」

 告白は、意外にもフランのほうからだった。
 いつもと違い舌っ足らずな言葉。
 フランのことが気に入っていたから、というのとそれから、いい匂いと言われて気を良くしてベルフェゴールは別にいいけど、と頷いたのだ。
 返事にぱちくりと目をしばたいたあと、ふにゃりと笑ったフランは可愛かった。照れ隠しにベルフェゴールが叩くくらいには。

「ねぇせんぱい、そういえばずっと気になってたんですけど、せんぱい仕事なにしてるんです?」

「‥‥、雇われのウェイター」

「ふぅん、忙しい?」

「まぁまぁだな」

 今度お店行ってもいいですかと訊ねるフランにベルフェゴールは頷き、店名と場所をさらさらとフランが差し出したノートに書いてやった。
 かくして付き合うことになったふたりだったが、割と会うには困らない。
 ひと月めこそ休みが合わないと言ってやきもきしたけれど、そんなのはそのときだけで、ふた月を過ぎる頃には互いの休みが沿うように合わさっていた。
 フランのバイト先がベルフェゴールの仕事場から駅に向かうまでにあるのでフランを迎えに立ち寄り、夕飯はどちらかの家で。恐ろしいくらい順風満帆な日々。
 そして、フランにとって嬉しいことはもうひとつ。

「カエルー、ほら土産」

「わーいっ」

 フランが甘いもの好きなのは付き合う前から知っていたベルフェゴールは、店じゃ廃棄だからと余ったデザート、主にケーキを持って帰ってきてくれるのだ。
 もとより食に興味は薄いほうで、食べないことも珍しくはなかったフランだが、甘いものには目がなかった。

「今日のコレ、なんですかー」

 すごくおいしい、と顔を綻ばせて言うフランに半ば見惚れながらケーキの説明をしてやった。どうも頭に残っているふうではなかったが、それでいい。

「フラン?」

「せんぱい、今日もいーにおい‥‥」

「テメーまた唇にチョコくっつけたままだろ、コラ寝んな」

「ん‥‥すぐ、おきますからー」

 ベルフェゴールの白いシャツに顔を埋め、匂いを嗅いだかと思えば今そうしたばかりなのにうとうとと、すぐにでも眠ってしまいそうだった。そしてソファの上、端に座るベルフェゴールの膝枕で小さな身体をさらに縮めて眠るフランが可愛いのは確かだ。ベルフェゴールは仕方ない、と諦めスマートフォンを手に取った。仕事絡みのメールに指を滑らせながら返信しつつ、頬を摘んでみたりして。
 すぅすぅ寝息を立てるフランをちらりと見遣り、触れていたスマートフォンのカバーをなぞる。この前、いつもお土産ありがとうなんて娘が父親にでも言うような文句付きで、フランがベルフェゴールに贈ったものだ。ストラップと同じカエル柄。早速つけたら嬉しそうにしてたっけ、とベルフェゴールの頬が緩む。
 さらさらとエメラルドカラーの髪を梳くとすり寄るようにフランが身じろいだ。本格的に寝入ってしまったのを見て、その軽い身体をベッドに運んでやる。フランのバイトのないこんな夜は、かなり好きだ。きらきらと眩しいくらいに満たされた、ふたりの時間。






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