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静かに重たい瞼を開ける。瞳には光なんてものは入ってこない。


「闇」それがわたしの周りを支配していた。


なんだか怖くなり、深くどす黒い闇から逃れようと必死に逃げ道を探した。けど辺りが見えないので自分がどこにいるかもわからない。


がむしゃらに右へ左へ前へ進む。


「は、は...っ!」


呼吸も荒くなる。


こんな弱い自分はダメだ。気を引き締めようとぐっと手に力をいれるとなにかを持っている感覚があった。


カチャッ


右手にはわたしの愛刀があった。愛刀にはついさっきのものだろうか、赤紫色の液体がついていた。


「っ!!」


怖くなり液体を振り払う。ブンッと風を斬る音がした。妙に心地いい。


「と、しろ...っ。」


わたしの大好きな、大好きな名前を呼びながらさ迷う。


ふいに足元に何かがあたる感覚があった。恐る恐る足元を見ている。


「と、うしろ...。」


そこには仰向けになった愛しのあの人がいた。驚きのあまり膝が崩れ落ちる、と同時にバシャと液体の音がした。


「とーしろ、目ェ開けてよ。とーしろ。」


肩を揺さぶるが反応がない。嘘だと目の前を否定し必死に肩を揺さぶる。


「起きて、起きて十四郎!!!」


冷たくなった手を握り暖めようとする。


「起きて、起きて、起きてェェェ!!!」













「......っ!!」


遠くの方で声がする。しかし何を言っているのかよくわからない。


「...凛華っ!!!」


なに?わたしを呼んでいるの?声が小さくて聞こえない。


「凛華!!!」


「えっ!?」


目を開ければ突然ドアップの十四郎。思わず後ずさりをした。


「なななななに!?お母さん寝ている子にそんなことさせるような子に育てた覚えはないよ!!」


「育てられた覚えないわ!!!んなことよりも、どうした?」


十四郎の手がわたしの目元の何かを掬った。


「......泣いてる?」


「俺から見たらそう見えるけどな。」


そう、困った風に笑って頭を撫でてくれた。その笑顔に応えるようにわたしも笑う。


「知ってるか。」


「なにを?」


頭を撫でていた手はわたしの小さな手を包み込むように握った。


「怖い夢は、誰かに話したほうがいいんだぞ。」


「そ、そうなの?」


「正夢にならねーからな。」


正夢、か。たしかにあれは本当に怖い。


わたしは包まれていない手をそっと大きな手に重ねる。それは夢で握った冷たいものなどではなく暖かく心地いいものだった。


「......聞いてくれる?」


「あぁ。」


息を吸い込み、うる覚えのわたしの悪夢の話をした。いつの間にか暗い空間にいて、そこに横たわった冷たい十四郎がいたこと。


そのことを話すと渋い顔をして「笑えねーな」と言った。けどその顔はすぐに笑った。


「でも、幸せだな。」


「え!?どうして!?」


「お前ェ、知らねーの?」


びっくりした顔でこっちをみる。それに対してびっくりするわたし。


「夢の中で死んでいるやつは、幸せになれるって聞いたから。」


「そ、そうなの?」


「そうらしいぞ。」


「そ、そーなんだ。」


よかった、少し安心。ごろんと寝転がる十四郎の横にわたしも寝転がる。


「凛華。」


「なーに?」


「幸せになろうな。」







悪夢の中で繋いだ手は







それはわたしを幸せへと導いてくれる暖かい彼の手でした。



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