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※ 雪恋心の続きです



今宵は雪が舞っていなかった。ただぽつりぽつりと小さな滴が地上にいるものを濡らしていく。


地上のものはその滴に当たらぬよう傘をさし出掛けていた。


わたしは黒いコートにフードを被り人混みの中をふらふらと歩く。足はおぼつかない視界はぼやける。


風邪、というやつだ。そんなこと言われなくたってわかる。


だけど今日は大事な日だから熱だ風邪だと休むわけにはいかない。


朝の会議で言っていたことを頭の中でもう一度整理した。


「高杉、晋助が江戸に来てる?」


「あぁ、どうやらな。」


「高杉、が。」


「そういえばお前一度も会ってねーんだったな。」


「え、あ......はい、そうですね。」


「奴は要注意人物だ。女男味方構わず斬り捨てるからな。見つけ次第必ず俺に伝えろ。」


「今回高杉は江戸のどこかの巷に船を上陸させている。これを機会に船を見つけ仲間を検挙する。」


「高杉はどうするのですか?」


「今回この船にはいないと山崎が報告した。だから高杉を捕まえることはないはずなんだが。」


「噂で高杉は江戸に来てる、と。」


「そうだ。奴の居場所は今監察に探らさせている。俺らは巷にある船を見つけ高杉の仲間を検挙することだ。」


「「「「御意。」」」」


「...,,,凛華。」


「はい?」


「本当に気を付けろよ。」


「......御意。」



言えなかった、もう高杉とは接触しててしかも傷の手当てして逃がしました、だなんて絶対言えない。


言ったら裏切り者として切腹になにか加算されるだろう。考えただけでも恐ろしい。


「はぁ、はぁ。」


息をするのが苦しい、頭が重たく体もだるい。それでも引きずるように巷という巷を歩き回る。


もしかしたら、という期待をのせて。


「......くっ、は。」


ボーッとする意識も遠くなってきた。それでも歩けるのはあなたに会いたい気持ちが大きいから。


「......たか、すぎ。あいた、い、よォ。」


半分しか空いてない目から涙という滴が雨と共に頬を伝う。気づいたら伝っているのが涙なのか雨なのかわからなくなっていた。


そんな中見えた紫色で蝶柄のお馴染みのあの派手な着物。笠を深く被りこちらを見ていた。


会いたすぎて幻覚見るとか、わたしイカれてるわ。


わたしの意識はそこでシャットアウトされた。


 
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