( 1/1 ) ビュウウゥゥ 凍てつくような寒さの風がわたしの服と服の間を通り、暖かさを奪っていく。 「ううぅ、寒いー。」 とうとう今年もやって来た寒い季節。真撰組零番隊長のわたしは、こんな寒い時期でも市民のためかなんだか知らないが見回りというものを怠らない。 特に最近は乾燥がひどいので火事が起きやすい。火事になる一歩手前で防ぐことができたら、という近藤さんの願いもある。 近藤さんがそこまで言うなら、ということでわたしたちは渋々寒い時期の見回り強化を承諾したのである。 だが、しかし、しかしですね、 「サボり魔と、ペアなんてついてないわ……。」 そう本当は見回りというのはふたりで行かなければならないもの。しかし今日わたしはひとり。 理由は例のサボり魔、沖田総悟が異名の通りサボったからだ。きっとどこか暖かいところでスヤスヤ寝ているに違いない。 「いいなァァ。」 既に寒さでカチカチの手に暖かい息をかける。 少し歩き疲れたわたしは公園に寄った。公園は子供達で溢れていた。 わたしはそこのベンチに腰をかける。 「ふぅ、」 「なーに堂々とサボってんでィ。」 突然頭上から聞き覚えのある声がした。わたしは勢いよく振り向く。 「沖田ァァァ!!」 例のサボり魔、沖田はわたしの横にドカ、と座る。相変わらずの堂々ぶり。 「あれ、凛華隊長じゃねーですかィ。」 わたしだと気づいてなかったらしく少し驚いた顔をする。 「沖田あんた今日見回りでしょォォ!?あんたこそなに堂々とサボってんのよ!!」 「サボってねー。見回ってましたさァ、子供達を。」 「子供達もだけど!!他のところも!!」 「見やしたよ、遊具、ベンチ、木の後ろとかねィ。」 ああ言えばこう言う。なんて野郎だ。 するとしばらく考えていたように見えた沖田がまた驚いた顔でわたしに問う。 「……今日の見回りペアって、もしかして凛華かィ?」 「今頃?それ朝確認してることよね?」 全く、こいつは朝なにを聞いていたのか。いや、夢の中旅してたか。 「しまった……。」 「?」 沖田がボソッと呟く。 「凛華、行きやしょう。」 「え、なに、なんて言ったの?」 「なんでもねー。」 その時、右手が暖かいものに握られた。それは沖田の左手だった。つまりわたしたちは今手を繋いでいる。 「え、あ、おき、」 「冷てーな。」 最後まで言葉を言わせるか、とでも言うように繋がれた手を沖田はポケットにいれる。 暖かい。 「悪ーねィ、ひとりにさせちまって。寂しかったろィ?」 「べ、別に寂しくなんかないもん!!」 「へー、どうだか。」 「本当だし!!わたしそこまで餓鬼じゃないもん!!」 「凛華は充分餓鬼でさァ。」 「どこが、」 ふと左手に違和感を感じた。指の間にある指の感触。それは時々きゅ、と強く優しく握られる。 わたしは今ポケットの中でなにが起こっているのか、わかった。 「あ、わ、」 一気に体の温度が上がる。 「ほら、そういうところが」 ちゅっ 頬に彼の唇があたる。 「餓鬼で可愛いんでィ。」 沖田は最高にかっこよく最高に意地悪な顔でわたしにその言葉を放った。 「おおお沖田?」 突然の出来事で頭がついていかないわたし。 「言っとくけど、コレ誰にもしてるわけじゃないんでィ。」 「え、そ、なの?」 「そうでさァ。これはある特別なやつにしかやらねんでィ。」 彼はわざと遠回しに言葉を使って言う。そのおかげでいまいちよくわからない。 「俺ァ好きなやつには愛情表現が素直でねィ。」 やれやれ、と呆れ顔で語る沖田。 「つつつつまり、え、嘘でしょ。」 「嘘じゃねー。」 彼は右手をわたしの頬に添え顔を近づけた。そして耳元で言う。 「ずっと前から凛華が、好きなんでィ。」 悪魔の愛を受け止めましょう 神様、どうやらわたしはとんでもない悪魔に捕まったらしいです。 でもなんでかわかんないけど、不思議とね、心がポカポカしてるの。この季節にはぴったりの暖かさ。 神様、わたしは欲張りです。 でも人間欲張っていかないと生きてけないよ、ね? |