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「ん...っ。」


意識が少しずつ戻る。体は布団の中に額には濡れたタオル、そして見慣れない周り。


わたしは未だにだるい体を起こした、と同時に気づいた。


「......隊服じゃない。」


周りをキョロキョロ見渡したらはしっこの方に綺麗に畳んで置いてあった。


「よかった。」


あれは近藤さんからもらった大事なもの。無くしたりなんて絶対したくない。わたしはそれを取るために立ち上がった。


「......くっ。」


ズキズキと痛む頭を押さえながら隊服のポケットに手を伸ばす。そして取り出したのは、


「あれ、ない?」


携帯が、ない。よく考えてみればわたしの愛刀もない。


「どこ、どこ?」


孤独、消失、ひとりぼっち、狭い空間、連絡を遮断されたわたしは恐怖に陥る。


ココハドコ......?


「かっ......は、ぁぁ、はっ。」


やばい、過呼吸になりそうな息遣い。息がしずらくなった。必死に息しようとするが中々うまくできない。


なにか袋を探すもなにもない。辺りは物がなく殺風景。


なにか、二酸化炭素をくれるなにか。


その時だった。


「落ち着け、わかるか?」


後ろから低いあの大好きな声が聞こえる。


「はっ...、は、ぁ。」


返事をしたいが今は呼吸をすることで精一杯だ。


彼はわたしを後ろから抱き締めるように座り口元に袋を当てる。


「ゆっくり息吸え。」


「はっ、はぁっ。」


わたしは呼吸をすることよりも弱々しい力で彼の細い腕を掴んだ。


「......。」


しばらくしてわたしの呼吸は大分落ち着いた。まだ少し辛いがそれでも高杉の腕は離さなかった。


「いい加減離せ。」


「......いや。」


ここはどこなのかどうして高杉がいるのか、たくさん聞きたかったが声にならない。


代わりに出たのは、否定の言葉。


「......離せ。」


「やだ。」


「殺すぞ。」


「殺してよ。」


わたしは高杉の方を向き胸ぐらを掴んだ。


「殺してよ、殺してよ!もうこんな辛い思いしながら、高杉を待つよりか死んだ方がマシだよ!」


「!」


「もう嫌だよ苦しいよ一人は寂しいよ嫌だよ、殺」


続きの言葉は高杉の口の中へと飲み込まれた。


必死に剥がそうと抵抗するが、手がわたしの頭を固定しているためビクとも動かない。


酸素を求め離そうとするがそれを許そうとしない唇。ついにわたしは腰が抜けてしまった。


「冗談でも死んだ方がマシとか言うな。」


「た、高杉が言わしたんじゃん。」


「......気のせーだ。」


「気のせーじゃない。」


「気のせーだっつってんだろ。」


「んなまさか。」


「んなまさかだ。」


お互い顔を見合わせ微笑む。そしてどちらからともなく抱き締めた。


その時聞こえたか細い声。


「俺も、会いたかった。」







雪恋心は溶けて







みんなごめんなさい、わたし裏切り行為をしてしまいました。

でも今だけ、今だけこの甘い空間を味わさせて下さい。

これでもう最後だから。



 
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