( 1/2 ) はじめはね、ただの幼馴染みだったんだ。 顔も格好よくて背も高くて(他の男子に比べたらそうでもないけど)。 残念ながら性格はサディスティックだが、それでも女の子からはいつもモテモテ。 だからすごく自慢の幼馴染み。羨ましがられるとこっちこ鼻が高くなっちゃうくらい! 口では「そんなことないよー」とか言いながら内心は「でしょでしょ?」とか思ってるわたし。 そんなわたしは今日も自慢の総悟と登校しています。 「おはよー!総悟ォ!」 「朝から元気なやつでィ。」 自転車に乗り、片耳塞ぎながら嫌な顔をする総悟。 それでも毎朝総悟は寝坊しそうなときでもわたしを待ってくれる優しい幼馴染み。 「今日はちゃんと起きれたよ!」 「毎晩10時に寝てるやつが寝坊する方がおかしんでィ。」 「......でも今日は、今日はちゃんと」 起きれたもん、そうボソボソと口の中で喋るわたし。 そんなわたしを見て総悟は一回ため息をついて、手をあげた。 「いい子いい子。」 その手はわたしの頭にいき撫でられる。子供扱いをされているようで本当は嫌だが、この撫でられている感じは好きなので拒否はしない。 「えへへへっ。」 「気持ち悪ィ笑い方。」 「そんなことないし!」 「へィへィ。いいから早く乗りなせェ。」 「......うん!」 わたしだけの特等席、総悟の自転車の後ろに跨がる。総悟いわくここは誰にも乗せたことがないらしい。 だからわたしだけの特等席。 「凛華、しっかり掴まっとけ。」 わたしの手を掴み総悟のお腹部分でクロスさせる。少し引っ張る力が強すぎて痛い。 「痛い痛い痛い痛い!!」 「いい響きでさァ。」 「その性格いい加減直そうよ!」 「こんな優しい性格をかィ?」 「どこ、が......っ!?」 喋り終わらない内に総悟は自転車を出発させる。もう少しで舌を思い切り噛むところだった。 「きゃっ、わ、ぁ!?」 田舎道だからかデコボコしたところが多い。引っかかる度にわたしは自転車から体が離れる。浮遊感が恐怖心を引き起こさせる。 「総悟ォォォ!!なんでいつもの平地通らないの!?」 「こっちの方が、近道なんでィ。......よっ!」 「ぎゃわあ!?」 ぎゅっと総悟の服を掴む、必死に掴む。このままじゃ本当に地面とこんにちわんしちゃうから! 「掴んどけっつったろィ。」 「必死に掴んでるううう!!」 ガタガタとデコボコ道はまだ続く。 「......死んでも離すなよ?」 「死んでも離しませんんんんん!!」 するとキキィ、と音と共に止まる自転車。わたしは思い切り顔面を固い背中に当ててしまった。 「いた......っ!!」 文句を言おうと顔を上げた時だった。 「今の言葉」 「?」 「絶対、忘れんなよ。」 口元を手で押さえ、そう言った。ほんのり耳も赤かった。 「どういう意......味ぃ!?」 また喋り終わらない内に自転車が出発する。もっと文句を言ってやろうかと思ったがそれも叶わず。 わたしは必死に必死に総悟を掴んだ。 「自分で考えなせェ、鈍感凛華。」 「は、ぁ!?」 その言葉を聞きながら彼の大きくて暖かい背中に引っ付いていた。 その時に耳を通して聞こえた総悟の心臓の音。 ドクンドクンとさっきより鼓動が早くなっていたのは気のせいだろうか。 相い寄る言霊 あなたとわたしの言葉が引かれ合って、気持ちも相寄り始めた。 私たちの物語はこれから始まったんだよ。 アイビー 花言:友情、死んでも離れない |