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「で、あそこに見えるのがターミナルというものなんです。」


「随分発達していますね。」


「そうですか?今ではこれが普通になってしまいました。」


こんな会話を延々と喋りながら歌舞伎町を歩いていきました。


しかし私が一方的に喋っていてハザマさんは笑うか相槌を打つかのどちらかをしていただけでした。


それに彼は時々、遠くの方を見つめていました。気のせいでしょうか?


「ハザマ、さん?」


突然ある一点の方向を見つめ固まってしまう彼。そこは深く暗い森が続いているだけだった。


「ハザマさん、どうされたのですか?」


すると彼は掠れる声で、


「夕……。」


と呟いた。


「ゆ、う?」


一体誰なのですか、そのお方は。


「凛華さん。」


彼は細い吊り目を少し見開き私を見つめる。表情は優しかったが声は焦っていた。


「そろそろお暇させていただきます。」


「え、」


ここで離れがたいと思うのは私だけなのでしょうか。


「申し訳ありません、凛華さん。」


私の帰りを待っている犬がいるのです、彼はそう笑顔で言った。


「あなたの案内、大変楽しませていただきました。ぜひまた会う機会がありましたらもう一度。」


「ハザ、」


ブォォッ


「きゃっ!!」


勢いよく風が通り過ぎ、思わず目を閉じてしまいました。


再び目を開けますと、


「あ、れ?」


そこにハザマさんの姿は見当たりませんでした。
 
 
 
 
 
 
 
それでも幸せ
 
 
 
 
 
 
 
今日起こったことは夢だったのでしょうか?でもこんな一時の幸せ、それでも幸せです。

ハザマさん、素敵な夢を見させていただきました。

どうか夕さんとお幸せに。



 
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