( 2/3 ) 約束の時間。 いつも待つのは私の方。それに対して文句も何もない。寧ろ待つ方が好きだ。 いつもの時間、いつもの場所。それは私にとって一番甘い時間だ。 夕暮れの中、走ってくる人物が見える。 「悪ィ。待ったかィ?」 それはあのクラスの皇子様、沖田総悟くん。 彼は額に汗を浮かべながら走ってきた。私はそれに優しい言葉をかける。 「平気だよ。今日も女の子の相手お疲れ様。」 「ったく、まじ勘弁してほしーぜ。毎日毎日毎回毎回。」 はぁ、と溜息をつき額の汗を拭う。 そのひとしぐさだけで私の心は跳ね上がる。 「仕方ないよー。モテるんだから。」 へらへら笑う私を余所に沖田くんはぶすっ、とした顔をしていた。 「………。」 「お、沖田くん?」 私は突然俯いた沖田くんの顔を覗く。 ぐいっ 「わあ!?」 腕を急に引っ張られた先には沖田くんの厚い厚い胸板。状況を理解した私は顔が徐々に熱くなる。 そして、沖田くんの低い声が私の耳を刺激する。 「今はふたりっきりだけど?」 「あ、の。」 「名前、呼んでくだせェ。」 ぎゅうっ、と力強く抱きしめられる。それに負けないように声を振り絞った。 「そ、総悟くん。」 「くん、無しでィ。」 「総、悟。」 「もう一回。」 「総悟……。」 「もー、一回。」 「総悟。」 最後にそう言うと、総悟の顔が近付いた。目を閉じ数秒後、ふたりの吐息が交じり合う。 「……凛華、好きでさァ。」 「私も、総悟好きだよ。」 この時私は、この瞬間のために今まで生きてきた気がした。 皇子様の放課後 「……凛華。」 「なあに?」 「そろそろこの間係、バラさねーかィ?」 「え、そしたら女の子達悲しむよ。私の皇子様がぁ、て。」 「……俺は椿の皇子様じゃねーのかィ。」 「え、たたたた確かに私の皇子様だけど///」 「はァい、てことでみんなの皇子様は卒業ォ。 明日からは椿限定の皇子様、てことで早速報告ゥ。」 「え、バラしちゃうの!?どうしよう、女の子達に何かされないかな……。」 「大丈夫でさァ。椿は俺が守りやす。」 彼と私は秘密の関係。 だけど明日から、それは壊れる。 |