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約束の時間。


いつも待つのは私の方。それに対して文句も何もない。寧ろ待つ方が好きだ。


いつもの時間、いつもの場所。それは私にとって一番甘い時間だ。


夕暮れの中、走ってくる人物が見える。


「悪ィ。待ったかィ?」


それはあのクラスの皇子様、沖田総悟くん。


彼は額に汗を浮かべながら走ってきた。私はそれに優しい言葉をかける。


「平気だよ。今日も女の子の相手お疲れ様。」


「ったく、まじ勘弁してほしーぜ。毎日毎日毎回毎回。」


はぁ、と溜息をつき額の汗を拭う。


そのひとしぐさだけで私の心は跳ね上がる。


「仕方ないよー。モテるんだから。」


へらへら笑う私を余所に沖田くんはぶすっ、とした顔をしていた。


「………。」


「お、沖田くん?」


私は突然俯いた沖田くんの顔を覗く。


ぐいっ


「わあ!?」


腕を急に引っ張られた先には沖田くんの厚い厚い胸板。状況を理解した私は顔が徐々に熱くなる。


そして、沖田くんの低い声が私の耳を刺激する。


「今はふたりっきりだけど?」


「あ、の。」


「名前、呼んでくだせェ。」


ぎゅうっ、と力強く抱きしめられる。それに負けないように声を振り絞った。


「そ、総悟くん。」


「くん、無しでィ。」


「総、悟。」


「もう一回。」


「総悟……。」


「もー、一回。」


「総悟。」


最後にそう言うと、総悟の顔が近付いた。目を閉じ数秒後、ふたりの吐息が交じり合う。


「……凛華、好きでさァ。」


「私も、総悟好きだよ。」


この時私は、この瞬間のために今まで生きてきた気がした。
 
 
 
 
 
 
 
皇子様の放課後
 
 
 
 
 
 
 
「……凛華。」

「なあに?」

「そろそろこの間係、バラさねーかィ?」

「え、そしたら女の子達悲しむよ。私の皇子様がぁ、て。」

「……俺は椿の皇子様じゃねーのかィ。」

「え、たたたた確かに私の皇子様だけど///」

「はァい、てことでみんなの皇子様は卒業ォ。

明日からは椿限定の皇子様、てことで早速報告ゥ。」

「え、バラしちゃうの!?どうしよう、女の子達に何かされないかな……。」

「大丈夫でさァ。椿は俺が守りやす。」

彼と私は秘密の関係。

だけど明日から、それは壊れる。

 
 
 
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