( 2/3 ) 気づいた頃には私は総悟くんの腕の中にいた。 「そ、ごくん?」 「俺ァだったら、」 ギュッと背中に回った腕に力が入る。息が苦しい。 「絶対に凛華を泣かせるようなこたァしやせん。」 「え?」 「俺は、凛華を泣かせねェ。」 「ちょ、総悟くん。離そう。とりあえず離そうよ。」 そう訴えかけるが相手は聞く耳を持たずずっと抱きしめたまま。 というかここ道の真ん中よ!恥ずかしいし、銀ちゃんに見られたら……。 「あらあらァ?お前ェらなにしてんの?」 「旦那ァ。」 「ぎ、銀ちゃん。」 噂の人物来ちゃったー!! 「捜し物してたら、なにこれ?」 「ち、違うの。銀ちゃん。これは」 「俺ァ本気ですぜィ、旦那。」 銀ちゃんと総悟くんが火花を散らしている。互いに一歩も譲らず。 「凛華。行くぞ。」 「はわァ!?」 銀ちゃんに腕を掴まれ引っ張られる。段々と総悟くんが遠くなっていく。 気づけば万事屋に戻っていた。 「銀ちゃん……?」 「んだよ。」 さっきから仏頂 面なんですけどォォ。ってか普通私が怒る立場じゃね? 「〜〜〜〜あぁ!!もう!!」 無言に耐えられなくなったのか銀ちゃんは頭を掻きむしる。 「俺は!凛華との約束覚えてるぞ!! 20歳の誕生日にプロポーズするって。 けどよォ、考えてみれば凛華はこんなやつでいいのかなって思っちまってよ、中々言い出せなかった。」 「銀ちゃん…。」 そんなにこの約束のこと、考えててくれたんだ。あの年中ぐうたら過ごすあの銀ちゃんが。 「私は銀ちゃんじゃないと嫌だな。総悟くんじゃなくて銀ちゃんがいい。」 「んで総一郎君がでてくんだよ…。ヤキモチ妬かせる気かコノヤロー。」 「ん?」 「いや、なんでもねェ。」 「?」 そして銀ちゃんはハハハッと笑い、私の前にきた。膝をつき手をとる。まるで王子様みたい。 死んだ魚の目の王子様が口を開く。 「やっぱ俺も凛華じゃねェと無理だわ。 凛華、お前ェの20歳の誕生日プレゼント、俺の名字受け取ってくれねェか?」 キライ、嘘スキ いつまでも貴方の近くにいたいから。 「ありがとう銀ちゃん。」 人生の中で最高のBirthdayPresentだよ。 →あとがき |