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「凛華ちゃーん。そのお花のお水取り替えてお買い物行きたいから店番お願いできるー?」

「はーい!わかりました!」



お願いね!という店長の声とともにパタパタと慌ただしい足音は消えていってしまった。その足音が消えたのを確認してふぅと溜息をつく。


わたしはここの花屋でバイトをしている姫路野凛華。実はここの店長とわたしのお母さんが仲が良くちょうど人もいないということでお手伝いとして無理やり働かされている。


別に花を見るのは嫌いじゃないし、ここのお店に来るお客さんは皆いい人ばかりで楽しい。だけど体力的に疲れるので少し面倒臭い。


時計をちらっと見るとそろそろあの時間。わたしは奥のカウンターから店の入口へ移動してキョロキョロと辺りを見回した。


おかしいな、どこにいるのだろう。そう思っていた時だった。



「不審者見てェだな。」

「あ!沖田さん!」



横から声がかかりグンとテンションが高くなる。彼は相変わらず面倒臭そうな顔をしてガシガシとわたしの頭を撫で回した。


彼は帰り道いつもここを通る大学生の沖田総悟さん。どうやら教育関係の学部に行っているらしい。将来は校長の座に登りつめることとこの前話してくれた。


彼と出会ったのは数ヶ月前。暇そうに外を眺めていたわたしと目が合ってぺこりと頭を下げて挨拶をしたのが始まり。そこから徐々にお互いの距離が近づき話すようになった。



「今日もお疲れ様です!」

「本当でィ。暗殺計画失敗してまた練り直さなきゃいけねェ。」

「学校へなにしに行ってるんですか...。」

「何って土方暗殺しに。」

「可哀想、土方さんって人...。」



立ち話もなんですし、ということでお店に入ってもらいわたしはお茶を用意することにした。


わたしは台所へ行き透明なガラスのコップに氷を入れて麦茶を入れる。段差に気をつけながら降りてスリッパを履いて沖田さんを呼ぶと彼は店の中の花を見ていた。



「はい、沖田さん。」

「おー、どーもー。」



少し汗かいたコップを受け取りそれをゴクゴクと一気に飲む。その横顔さえも絵になる彼は世でいうイケメンという奴なんだろう。



「なんでィ、そんな見つめて。調教して欲しいのかィ?」

「いえ、全力でお断りします。」



性格がこんなのじゃなければ絶対モテてるだろうにな。いや、もうルックスだけでモテてるかな。



「そういえば姫路野はまだ高校三年生だっけ?」

「そうですよー。受験生ですよー。」

「おいおい受験生がここで何してんでィ。」

「だってお金欲しいですもん。」

「何のためにでさァ。」

「そりゃあ女の子は色々お金がかかりますからね!例えば...、」



そんな他愛もない話をしていれば外は夕焼けからすっかり日が落ち紫色の空が広がっていた。楽しい時間というのは本当にあっという間に過ぎていく。



「あ、沖田さん。こんな時間だけど大丈夫ですか?」

「あー、買い物して帰らねェと。」

「ご、ごめんなさい!こんな時間まで!」



どうしよう沖田さん困らせてしまった、慌てて立ち上がって詫びるわたしを見て沖田さんはクスクスと笑った。



「別に俺が好きでここにいるんでさァ。」

「え、」

「姫路野が謝る必要はねェ。」

「は、はい...。」



なんてかっこいいお言葉。でもそんなことを言われると少しだけほんの少しだけだけど期待をしてしまうわたしがいる。おかげで顔も真っ赤なはずだ。


そんなわたしの頭にポンポンと手を置き撫でる。今度は乱暴ではなく優しかった。珍しく優しい沖田さんだったのでなんだか調子が狂ってしまう。



「そうだねィ、今度は時間めいいっぱい使って話したいねィ。」



そう言ってニヤリと笑って彼は鞄の中を漁り始めた。そして出てきたのは2枚の紙。わたしは目を輝かせた。



「今度の日曜日、空いてやすよね?」

「は、はいっ...!!」



わたしは大きく頷いて、少し頬を赤に染めた彼の持っていたチケットの一枚を受け取った。







カラフルワールドで踊る僕ら



わたしの気持ちを表すかのように

お店の中のお花が左右に揺れていた。


 
 
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