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「ねえねえ、聞いた?開発部のこと!」

「聞いたわよ!窓が破壊されてたんですって?」

「そうそう!その時何故か警備員もいなくて誰の仕業かもわからないんだって。」

「やだー。誰かうちの会社の機密情報でも狙ってるのかしら?」

「さあ?世の中物騒になったものよねー。」



その会話を女子トイレでしているおばさんに聞き耳を立て、静かにため息をつく。今日の会社の中はその話題のことでもちきりなのだ。


課長は何か大事な書類が盗まれていないかなど確認をして上に報告をしているらしい。また私達も机の中などの書類を確認したりしている。パソコンの中身は何かウイルスが入っていないか確認中のため今は使えないので仕事をしようにもできない状態なのだ。


おばさん達の声が遠ざかったのを聞き、トイレから出て鏡の前へ立つ。



「うわ、ひどい顔...。」



目の下には隈、顔も青白く、唇にも血色がない。不健康ですと顔で表しているようなものだ。


確認中の自分の部署に戻ると皆が鞄を揃えて持ち、ぞろぞろと部屋を出ていっている姿が見えた。




「あれ、どこ行くの?」

「ああ、凛華。なんか今日は仕事にならないからもう帰れって課長が言われたの。」

「え?」

「ほら、パソコンも使えないし書類も今のところ不備はないみたいだし。」

「あ、ああ、そうなんだ。ありがとう。」

「んじゃね!凛華!」



ルンルンに帰っていく同期を見てまた溜息が出た。


あなた昨日「明日一緒に企画書まとめるの手伝うね!」て約束したのに。あの企画書今日中にまとめなきゃ間に合いそうになかったのにな。あれもこれもあの変な警備員のせいか。


私も荷物をまとめて帰ろう。そう思って部屋に入った。



「姫路野。ちょっといいか。」

「土方課長...。」



顎でクイッと指して背中を向ける土方課長に私は鞄の中の携帯を手についていった。



























「悪ィな。俺らのせいでこんなことに。」

「いえ、助けてくださったこと感謝してます。」



会社の屋上に連れていかれた私は靡く髪を耳に引っ掛けながら、土方課長とお話をする。土方課長は胸ポケットからタバコを取り出し火をつけた。



「土方課長、そういえば気になることがあるんです。」

「なんだ?」

「極上の魂、てなんですか?」



昨晩あの変な警備員が言っていた言葉。私はその単語を聞いたこともないしそれを聞いてなにか想像できるわけでもない。きっと私たち人間が思っているものより何か訳のあるものなのではないかと思う。昨日の土方課長が銀時さんに言っていた感じからそんな気がする。


真っ直ぐ土方課長の目を見て言う。一瞬目が合い、ふうっとタバコの息を吐く。



「....俺らの役柄は知っているか?」

「銀時さんから聞いた話ではここで言う警察みたいなものだと聞きました。」

「そうだな。俺らは警察だ。警察といえばどんな仕事をする。」

「え?えっと事件を捜査したり犯人を逮捕したり?」

「ああ。俺らはそれをしている。」

「は?あの、意味がよくわからないのですが?」



質問の内容と合っていない答えに私は混乱するばかりだった。



「俺達警察はこの人間界で彷徨っている魂をお上に返すため捜査したりする。そのため人間界に降り人間の中に混ざり彷徨う魂を探している。」

「そ、そうだったんですね。」

「俺達は長く人間界に留まることは許されない。ある程度の仕事をしたらお上に帰るのがルールだ。」

「じゃあ、今回も帰るつもりでいたんですか?」

「ああ、そのつもりだった。しかしその仕事を順調にこなしている矢先、俺達に新たな調査が来た。」

「もしかして、それが極上の魂に関する何か....?」

「感が鈍い姫路野にしては珍しいな。」



ふっと鼻で笑う土方課長をキッと睨む。この人は一言多い。その睨む顔を見てまた鼻で笑い話を続ける。



「依頼内容は詳しくは言えないが簡単に言えば極上の魂について調査せよ、とのことだった。それが今回わかったことがお前が極上の魂を持ち合わせていることだった。」

「だから、その極上の魂とやらはなんですか?」



遠回しに説明する土方課長にイライラしながら聞くと、まあ待てと言われるかのように頭に手を置かれた。



「極上の魂とはそこらの人間が持っている魂とは違う。汚れを知らない純粋な魂のことを言う。」

「え?汚れならたくさんついてますけど?」

「お前らが思っているような汚れじゃない。.....その極上の魂は特殊なエネルギーを持ち、持ち主の肉体が滅びるまでエネルギーを放ち続けるという。」

「なにそれ。すごいですね。」

「それをお前みたいな馬鹿が持ってるんだよ。」



むっ、馬鹿は余計です。と言おうと口を開けば頭に置いてあった手を左右乱暴に撫でた。



「極上の魂は噂だが死者を蘇らせることができると言われている。きっとそれを悪用しようとしたどっかの天使がお前を連れ去ろうとしたんだろ。」

「死者を蘇らせる!?それなら死んだおばあちゃんにも会えるかな。」

「馬鹿か!人間は死んだら蘇らない。そのルールをひっくり返したらどうなると思ってんだ!」

「え、どうなるって...。」

「土方さん、凛華先輩は馬鹿なんだからもっとわかりやすく説明してやってくだせェよ。」



その声を聞いて振り向く。そこには片手をポケットに突っ込んでこちらに向かってくる沖田の姿があった。



「お、沖田....。」

「いいですかィ、凛華先輩。」



 
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