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真っ白でふわふわとした世界が目の前に広がっていた。まるで雲の上に乗っているような心地よい感覚。地面なんてものはなくただふわふわと浮いていた。


再び目を閉じ、開くとやはり景色は変わらない。真っ白でふわふわとした世界。周りを見回しても色があるのは私自身。手を広げ閉じて、を繰り返すが異常があるようにも見えない。



「ここ、どこよ?」

「ここは死後の世界でさァ。」



知ってる声がして勢いよく振り向く。


するとそこにはやはり見知った顔、沖田総悟がいた。いつも会社で会うような格好で彼は平然としていた。



「し、死後の世界.....?」

「そ。ここは死んだものが一番最初に来る、言わば分かれ道みてーなモンでさァ。」

「.....あぁ、そういえば忘れてた。貴女も天使だった。」



ついこの間のことを思い出す。堕天使銀時さんと知り合いだった天使沖田総悟。新たな真実が発覚し益々頭を痛めていた。



「で、なんで私がこんなところにいるのよ?」

「さあねィ。まあいいじゃねーか。いずれはここに来るんだ。しっかり拝んどきな。」

「そんな切替出来るわけないでしょ!!あ、もしかして私今死に際とか!?」

「あんたならトラックに跳ねられても生きてまさァ。」

「なにそれ、ほぼ不死身じゃない。最強じゃない。」



ふうっ、と溜め息を漏らし辺りを見回す。さっきより色は増えた。私と沖田総悟。だけど物足りない。そう心の奥底から叫んでいた。



「銀時さん......。」



そう呟いてもその言葉はこの真っ白い世界の中じゃ色もつかない。けど不思議と私の心を色付けてくれた。会いたい、会いたい、どこにいるの。




「ありゃりゃ。こりゃあ重症だな。」

「な、なにがよ?」



呆れたように溜め息をつく沖田くんに少しイラッとして、目を細めて睨む。



「いいかィ。凛華先輩。よーく聞いてなせェ。アンタは容量悪いから人一倍よーく聞いてなせェ。」

「ひ、一言余計よ!!!」



顔をズイッと私の方に近づけ、先程とは違う真剣な顔で口を開く。



「恋心ってやつほど面倒臭いモンは邪魔なモンはこの世にねェ。」

「なっ.....!!」

「よく考えてみなせェ。アンタは人間。だけど奴はなんだ?天使だろィ?しかももうそれは過去形。今じゃ空飛ぶ羽もありゃしねェ堕天使だ。」

「っ...!!」

「そんな奴を想って何になる?叶いもしないモノを求め続ける程無謀なことはない。その無謀を追い求め結局壊れんのはアンタだ。」

「っ。」



そんなことはない、と完全に否定できることはなかった。そんなこと最初からわかっていた。堕天使と人間。本当は出会ってはいけない存在同士。


それなのに一緒に暮らして笑いあって助けてもらって。まるでお互いそんなこと気にしてなかったかのように暮らしていた。だけど心の隅ではそんな事有り得ないと否定していた。



「別に諦めろとは言いやせん。けど少し考えて行動しろってことでィ。」



すると突然ガタガタと崩れ始めた真っ白の世界。私はそんなことよりも頭の中は銀時さんのことでいっぱいで目の前で何が壊れようが関係なかった。



「もう一度言う。アンタは人間、旦那は堕天使だ。お互い知り合ってはいけない存在なんでィ。」








































「......総悟。」

「あぁ、土方さんでしたかィ。」



ツンと匂う消毒液の匂いに白いカーテン、ベッド、そして白い部屋に差し込むオレンジ色の陽。


そこのひとつのベッドで寝ていたのは俺の直属の部下、姫路野凛華。その横で姫路野の額に手を置いている総悟がいた。


総悟は顔を振り向けもせず、そっと姫路野の額に置いていた手を離した。姫路野の目からはひとつの涙が溢れていた。



「どうだ、調子は。」

「ひとつ、悪夢を見せやした。これで旦那から離れてくれればいいんですけどねィ。」

「......そうだな。」



俺達天使はその人にとっていい行いだと判断した場合悪夢をも見せることができる。ただ時間を巻き戻したり記憶を改竄して人間の関係を入れ替えたりするのは禁止されている。関係というのは関わっている奴ら自身が変えていくものだと教わった。第三者があれやこれやと加えるものではないと。


この悪夢は俺達の判断で良かれと思いしたことだった。



「あーあー、こんなに泣いてやがらァ。」



総悟はクスクスと笑い、涙を零す姫路野の頬にそっと触れる。俺も近づき涙をそっと指で掬った。涙はこんなにも暖かいものだったのか。もう数百年と涙を流していない俺にとって久しぶりの感じだった。



「悪ィね、凛華先輩。あれもこれも全部土方のせいでさァ。」

「...それもそうだな。全部俺のせいだ。」

「.....なんでィ、塩らしくて気味悪ィや。」



ちっとひとつ舌打ちをして姫路野の横を離れる。俺たちは二人で姫路野を見下ろした。



「......。」

「運が、悪すぎたんだお前は。」



姫路野の頭をひと撫でしてその場を立ち去った。


錆びた音のする扉を開け、閉める。なんとも虚しい音だった。







ごめんなさい



「.....んぅ?あれ、私なんでこんなところで寝てるんだろ。あれ?何この紙?」

『仕事中に倒れる馬鹿がどこにいる。しっかり休め。』

「これ課長の字、だよね...。はぁ、またやっちゃった。」

(アンタは人間、旦那は堕天使だ。お互い知り合ってはいけない存在なんでィ。)

「そんなこと、最初から、知ってた.....もん。」


ギイィィィィ  バタンッ



 
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