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「始め!!!!」



ピリピリとした雰囲気の中、鋭く通るひとつの声。その声が響いた瞬間に向き合ったふたりは奇声をあげて床を蹴った。



パンッ パパンッッ



竹刀と竹刀がぶつかり合う音がする。竹刀を合わせお互いがお互いの好きを狙おうとジリジリと迫る。緊迫した空気が俺達を包み込んだ。



「えいやぁぁぁあああ!!!」

パァァァンッ

「い、一本!!」



一瞬の出来事だった。敵のほんの少し緩んだ隙を見逃すまいと前に出て横腹、胴を一本取った。高い音が響き、次に歓声が後を次ぐ。


礼をして竹刀を横に置き、お面やらをとって先程まで試合に出ていたやつが銀魂高校の集まっている場所まで歩いてきた。



「凛華、お疲れ。」

「うん、ありがとう。」



にっこりと笑みで返す凛華にまた胸が打たれる。ああ、なんて可愛んだコンチクショー。


しかしこの笑みには俺だけが反応するだけでなく、応援してきた他のやつまで反応しやがった。俺の凛華なんだぞ、勝手に見んなよ。独り占め精神が働く。


俺の所属している剣道部は今銀魂高校の横にある高校(名前忘れた)での合同練習をしている。そこでひとつ試合をしてみないかと誘われたのでやってみたら女子の部はこのザマ。相手の方は頭が垂れ泣き出しているものまでいた。おいおい、どんだけだよ。


俺はというと出番までまだなので一番近いところで俺の凛華、俺の凛華(大事な事なので2回言ったぞ!!)を見ていた。いやー、相変わらず可愛いのもあるし、


なにより.....



「凛華先輩、こ、これタオルです!!」

「あぁ、ありがとう。わざわざ助かった。」

「はうぅぅぅ。」

「凛華さん!!私は飲み物を!!」

「ありがとう。ちょうど喉渇いてたの。」

「きゃうぅぅぅ。」



まあまあまあまあ、俺よりもモテっぷりがいいこと。ここまでひどいと男に嫉妬じゃなくて女に嫉妬することになるな。


普通ないぜ?女に嫉妬なんざ。俺は確かに独占欲は強いが凛華の気持ちも考えてこの気持ちは頑張って抑えている。あいつの友人関係や何やらまで口出すのは間違っていると思うからだ。


だがここまできたら異常だ。俺の凛華がとられちまう!!しかも同じ部活のやつに!!しかも女に!!ここが難易点だ。あぁ、複雑な気持ちだ。



「複雑な気持ちだなァ、銀時。」

「.....んでお前は毎回毎回!!俺の気持ちでも読めてんのか!!!」



クククッと薄気味悪い笑い方をするのは一応この剣道部の部員、高杉。一応というのはほとんどサボるため幽霊部員になりかけているやつだからだ。



「貴様が分かり易いのだ、銀時。」

「まっこと!金時は顔に出るけェの!」

「げ、ヅラに坂本まで!なんでお前らがここにいんだよ!」

「暇だったから。」

「暇だったから。」

「暇だったから。」

「いやいや、お前らとっつぁんに宿題たんまり出されただろ?」

「そういう銀時は何故出されてないのだ!」

「剣道でいい成績取るって約束してチャラにしてもらった。」

「ちっ、とっつぁん剣道部の顧問だからなァ。」

「だったら悪い成績取れば金時も宿題増えるき!」

「んなヘマしねーよ。つかお前はいい加減名前覚えろ。」



次男子の部の人ー、という掛け声が聞こえたのでそいつらに背中を向けて俺はノコノコとそこまで歩いていった。後ろから変な声がしたか聞こえないふり。



「銀時、頑張ってね。」

「おー、ありがと。」



横を通り過ぎた凛華にハイタッチして応援してもらえて声では冷静だが心の中はウキウキだ。


凛華にどうやったらかっこよく見えるか頭の中で色々な角度から見た俺の姿を想像する。おっ、この角度が一番いいな。


男子は個人戦ではなく団体戦らしい。先鋒に新八、中堅に土方、そして大将が俺。


みんななんで俺が大将なのか不思議に思うらしい。俺も思う。俺は中堅くらいがいいのによ、土方の野郎が取りやがって。土方も俺が大将なのが大変気に入らないらしい。


正座をして付ける防具をつけて、また審判の甲高い声で試合が始まる。


俺がぼーと見ているのは新八の必死に戦っている姿ではなく、横で同じく正座をして試合を見ている凛華の姿だった。背筋がピンと伸びていて凛としているその姿はファンにとって美味しいものだろう。



パァァァアンッ

「一本!!!」



ふと見ると新八はふう、とひとつ息をつき礼をしてこちらに戻ってきていた。どうやら一本取れたらしい。このまま一本取れたら大将いらないかな、なんちって。


次の土方が防具をつけ、竹刀を握り締め再び試合を始める声が響く。


試合はどう見ても土方の方が押している。なんだ、おれいらねーじゃねェか。凛華にひとつもかっこいいところ見せれねーじゃねーかよ。


俺はまた再び凛華を見た。



「.....んん?」



あれ、さっきの凛とした姿はどうした。興奮して立ち上がって試合を見ている。あれ、あれ...。やばいぞ俺。嫌な予感しかしねェ。


凛華は友達と話す。何々。



「土方のこと好き..........????」



は.....?

は...........?



「はあぁぁぁぁぁぁああ!!!!!?」



土方と相手側の奇声と一緒に、俺の違う意味の奇声も体育館全体に響き渡った。







おい待てお前なんつった



誰を好きになったって?

彼氏がいるのに他のやつを好きになったって?

よりによって土方かよおおおおおお!!!!?



 
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