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「凛華。」

「ん?」



そう呼ばれて振り返る姿に心臓がぎゅうっと締め付けられる。その度に俺はコイツに惚れ込んでんだなと実感が湧く。


笑顔でニコニコしながら次の言葉を待つ凛華に俺は後ろ髪を掻きながら下を向いて口を開く。



「今日、帰り一緒に帰らねェ?」

「今日?うん!大丈夫だよ!」

「お、おう、じゃあ後でな。」

「うん!」



そう言ってニコニコと笑いながら立ち去る凛華の後ろ姿を消えるまで見つめる。ゆらゆらとスカートを揺らして教室を移動する凛華は女っ気もあって、でも無邪気で可愛い。



「珍しいな、銀時が凛華殿を誘うなんて。」

「んだよ、悪ィかよ。ヅラ。」

「ヅラじゃない、桂だ!」

「でもまっこと珍しいぜよ。」

「たまには男から誘うのもいいだろ。」

「.....なんか、お前今日気持ち悪いな。」

「厨二病患ってるてめーに言われたくねーよ!!」

「あ"??誰が厨二病患ってるって??」

「お前の耳は飾りですかァ。聞こえなかったんですかァ。何度でも言ってやら!!お前がちゅ」



キーーンコーーンカーーンコーーン



「大変だぞ!次は第二理科室で授業だぞ!移動せねば!」

「おいィィィ!!これ遅刻確定じゃねェか!!」

「俺サボるわ。」

「アッハッハッハ!わしも!」

「ざけんな裏切り者ォォォ!!!」



結局この授業は遅刻して月詠先生に例のやつ(チャイムが鳴り終わった時にドアを開けるとクナイを投げてくる)をやられ、俺らはまたクラスの笑われ者となった。


笑ってる中に凛華もいたので、まあいいかと思ってしまう俺はこの前の俺と随分違いすぎて俺自身も気持ち悪い。

























「銀時お待たせ!」

「おう。」



部活を終え着替えた凛華が校門で待っていた俺のところまで小走りで来る。んな慌てなくてもいいのに。



「.......。」

「な、なんだよ。」

「えへへ。今日は怒ってないんだね。」



そう言われてズキリと胸が痛んだ。この前凛華に嫌な態度ばっかとってたからな。凛華も気にしてくれてたわけだし。なんか申し訳ねーや。



「悪ィ。俺思春期だから情緒不安定なの。」

「それ自分で言う?ふふふ。」

「自分の事だから言えんだよ。」

「それなら私も思春期の時期だから情緒不安定なのかな?」

「さぁな。凛華はどうだろうな。」



こうして下らない話をしながら俺は頭の中で別のことを考えていた。


こうしてふたりきりのチャンスを作った。学校や部活だったら周りが知り合いばかりだ。これは人に聞かれたら恥ずかしいわけで。


俺は凛華にしか言いたくないのでこうして自分でこのチャンスを作ったのは、作った。作ったのだがタイミングというのがわからずモヤモヤといつ言おうと考えていた。


よし、つ、次、次凛華が言葉を発したらにしよう!よし、次だ!



「あ、ここの南瓜」

「凛華!」



凛華の腕を引っ張ってこちらに向かせる。少し驚いた顔をして凛華は大きな瞳俺を見ていた。



「あ、あのよ、お前が優しいのは知ってる!」

「あ、ありがとう。」

「えっと、その....、だから無理しなくていんだぞ?」

「.....ん?」

「優しいのと我慢することは違う。我慢して凛華の気持ちを押し殺すのは俺はして欲しくない。凛華には素直に言ってほしいんだ。」

「う、うん...。」

「だから、土方を好きなら好きでいい。だけどな、俺はそれ以上に凛華のこと好きだし大切にしたいと思ってる。これだけは覚えといてくれ。」

「え?わ、私が土方くんを好き?」

「.....え?そうだろ?」

「わ、私が.....?ふふっ、あはははは!!!」



そう言った瞬間、凛華は腹を抱えて大声で笑い始めた。俺は何が起きたのかと思ってポカンと開いた口が塞がらないまま大声で笑う凛華を見ていた。



「ど、どうして私が土方くんを好きなの....。ぷぷ。」

「いや、だってお前!練習試合の時土方の野郎を好きって...!!!」

「あれは、土方くんの戦い方が綺麗過ぎて好きだなって意味で!別に土方くん自身を好きなわけじゃないよ!」



そう言って再び大声で笑う凛華を見て、勘違いしていた俺が恥ずかしくなって。やばい、今の俺絶対顔真っ赤だ。うわ、すっげー恥ずかしい。


真っ赤な顔を手で覆いしゃがんだ。


ということは俺はこの勘違いに頭を悩ませイライラして昨日徹夜近くまで伝えたいことを考えて、でもさっき纏まんなくてあぁ失敗したなやばいなこれとか思ってたわけか。こんな、こんな恥ずかしい結末あるかよ!!!


すると、ポンポンと頭に乗る小さな暖かい手。俺はそっと指の間からその人物を見た。



「ありがとう、悩んでくれて。銀時がどれだけ私を好きかわかったよ。」

「.....うるせー。」

「えへへ、もう、照れちゃってー。」

「そう言ってる凛華ちゃんも顔赤いけど?」



空いてる片方の手で林檎みたいに真っ赤になった頬をツンツンとつつくとプクゥと河豚みたいに膨らんだ。



「だって、銀時がこんな素直に言うことなんてないから、は、恥ずかしくて....。」



あ、やば。可愛い。そう思った瞬間には凛華は俺の腕の中にすっぽり収まっていた。華奢な体が腕の中に収まるこの感じは幸せと呼ぶモノだろうか。だとしたらこんなのも悪くねェかな。



「当分、この坂田は見れないからな。」

「う、うん...。銀時?」

「あ、なに?」

「ば、場所移動しない?」



その言葉を聞いて、体がピシリと固まる。そしてギギギッと錆びた音を出しながら周りを見た。


そこは、八百屋の目の前で観客が何人もいた。



「は、ははっ、あはははは。」

「....は、恥ずかしい。」

「えーと、その...。」

「いやー、いい青春見せてもらったよ!」

「若い子は本当羨ましいわねぇ。」

「す、す、す、すみませんでしたァァァァ!!!!」



ぎゅっと凛華の手を握り、その場を猛スピードで去る。そのスピードがいつも出ていたらきっと遅刻気味の学校も遅刻しないだろう。とにかくいつもよりも数倍速いスピードが出ていた気がする。


顔真っ赤な凛華が困惑な顔からものすごい満面な笑みを浮かべたのは俺が必死に走って数分後に知ることになる。







八百屋の前で落とされた



ロマンチックのかけらもないけど

それが俺達らしさってやつでして、

青春ってやつです。



 
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