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イライライライラ

「ぎ、銀時.....??」

「なに。」

イライライライラ

「な、なんかあった?」

「別に?」

イライライライラ

「......えっと、なんかその。」

「.....先帰る。」

「え、あ、ちょ...!」



困惑して下を向く彼女を横目でチラッと見て鼻で大きく息を吸う。そして凛華を置いてさっさと歩いた。


それでもイライラは解消されない。されるわけがないのだ。俺はこの前口にしたのを見てしまったのだ。こいつが土方を好きだと。


よりによって彼氏さんがいる前でそんなこと言いますか、俺がわからないと思ってそんなこと言いますかそうですか。ああ、考えただけでもイライラしてくる。


つまり俺はこの間の練習試合の時に彼女が別のやつのことを思っているのを知ってしまった。しかもよりによって相手が、相手があの土方だ。どうしてよりによって.....



「だあああぁぁぁあ!!!」



むしゃくしゃする!!相手が相手なのもすっごく腹が立つが何より俺は凛華がこのことを黙っていたことが許せない。


遠慮しなくていいじゃねーか、言えばいいじゃねーか。あいつが好きなんだと。俺は別にそれを咎めたりしねェ。心移りすんのは人間だから仕方ないことで。でも悲しいわけで。



「んでだよ....。」



帰り道、道にしゃがみ込み大きく溜息をつく。


あぁ、俺はこれからどうしたらいいのか。凛華はきっと優しいから俺のことを考えて別れたら俺が悲しむからとか、んなこと考えてんのかな。


だとしたら俺すげー空気読めない奴じゃん。何やってんだよ坂田。坂田そこにいんの邪魔だろ。はい、すみません。


でも、でも俺は......



「大丈夫ですかーィ。」



頭上から知った声。埋めた顔を上げるとそこには俺たちの一個下の後輩、沖田総悟(総一郎だっけ?)がいた。



「あり、死んでる?」

「生きてらァ。この生きた目が見えませんかー。」

「生きた目....?あんた大丈夫ですかィ。」

「おいそりゃあどうゆうことだァァ!!」



勢いで腰を上げ上から総一郎くんを怒鳴る。相変わらず涼しげで余裕な顔をしたやつ。なんなんだ本当にこいつは。



「で、なんか用ですかァ。」

「旦那ァ。俺ァあそこのクレープ食いたいでさァ。」

「え、何言ってんの総一郎くん。どうして俺が奢る的な話で進んでんの。」

「総悟でさァ。話聞いてあげるんだからこれぐらい奢ってもらわねーと。」

「は?ちょ、なに話聞いてあげるって?俺なんも言ってねーけど?」











「おっちゃーん、バナナクレープひとつ。あ、金はあそこの銀髪にツケといてくだせェ。」

「テメコノヤロォォォ!!!何ツケてんだァァ!!

おっちゃんイチゴクレープも!!!」



こうして無理矢理総一郎くんにクレープを奢らされ、元々中身のない財布は更に無くなり泣く泣く公園まで移動してベンチに座った。



「ちっ、バナナが少ねェや。」

「奢らせた上に文句かよ。」



コイツ、俺から聞くわけでもなくただただ具の少ないクレープをほうばってその上文句まで付ける次第だ。こいつ本当に何がしたいんだ。


手元にあるちょっとしかないクレープを見つめる。赤い苺が白いクリームと黄色の生地に包まれ俺の手元にある。それを思いっきり口の中へ入れた。



「ふぁひはにふくねーな。」

「何言ってるかわかりやせん。」



もぐもぐと口の中を動かして食べ物を噛み潰す。ジュワリと出る食べ物の液体を俺は潰した個体と共に飲み込んだ。ごくんと大きく喉が鳴る。



「前に、姉上が言ってました。」



公園で遊ぶ餓鬼んちょを見ながら、総一郎くんは口を開いた。



「女ってのはいつも男が素直になるのを待ち続けてるらしいでさァ。」



そう言って俺の方を見てニコリと笑った。俺は別に凛華の話をしてるわけでもないのにこんな話をして、俺はそんなにわかりやすいのか。


でも、素直って....。素直って、どういう...。


それじゃあ、と一言残して総一郎くんは鞄を背負って公園を出ていった。俺は再び溜め息をついてベンチに深く腰をかけて背中を伸ばす。


自然と見えた景色はオレンジ色で夕焼け小焼けの音楽が静かにゆっくりと流れていた。懐かしい音楽にさっきまでのイライラが自然と消えていった。



ヴーヴーヴー



ポケットの中で鳴る携帯を取り出して画面を開くと、凛華からのLINEがきていた。少しドキドキしながらLINEを起動させる。


そこには「ちゃんと家に帰った?今日はゆっくり体を休めてね。」と書いてあった。ただそれだけだった。


さっきまで自分の事ばっかの態度をとっていたのに、それなのに凛華はそれに対して文句ひとつも言わずに何も追求せずにいる。


きっと俺はこの凛華の優しさ、いやこの鈍感さに甘えてんだ。



「.......。」



自然と手は文字を打っていた。送信ボタンを押す前にその文字を確認してみる。


俺、凛華のそういうところ好きだよ。


....なんて、んなこと恥ずかしくて言えねーよな。


俺の親指はバツ印を押してただ一言「ありがとう」と打って、送信ボタンを押した。



「女ってのはいつも男が素直になるのを待ち続けてるらしいでさァ。」

「素直、かァ.....。」



そっか、さっきの言葉が素直ってことか。







ナチュラルな口説き文句



でも究極の天然に勝てる気がしなく

その言葉も文字にできないまま、

凛華に伝えることもできないまま仕舞い込んだ。



 
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