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女の子という生き物は単純なもので、意識をし始めた瞬間からその人を見る目は変わる。またその周りにあるものも今まで見ていたものとは全然違って見えてまるでそこだけ世界が変わったみたいだ。


ドキドキと鼓動を打つ胸を押さえながら学校の廊下をトボトボと歩く。


沖田を男の人と意識してからボーとすることが多くなり、家帰っても勉強せずに気がついたら考え事している。それはテスト中にも発生して散々な結果になってしまった。



「本当、私どうしたんだろう。」



はあ、と溜息をつき窓から外を見ると中庭でわいわい騒ぐ男の子達がいた。元気だなって笑いながら見ていた。



「.......ん???」



あれ、あれってもしかして沖田じゃない?面倒臭そうにポケットに手突っ込んで歩いてる人。


彼はサッカーボールを持った男の子達に引っ張られながら渋々中庭に向かっているみたいだった。その中には土方くんや山崎くんもいる。


今は昼休み。どうやら学年バラバラで対抗したいらしく色々な人達が集まっていた。



バチッ

「!!」



その時ちょうど見ていた沖田と目が合った。ドキンと心臓は飛び跳ねるように鳴り、ドクドクと先程より暴れるように鳴り始めた。


私から目を逸らすこともできずじっと見ていると彼の口がパクパクと動いて見えた。



「みて、て......?」



確かに口がそう動いた気がする。多分そんな感じの内容だと思って片手でオーケーの形を作って見せると、親指を立てて男の子達の方へと戻った。


見てて、なんて一体どういうつもりなのだろうか。


どうやら彼らはフットサルをするつもりらしい。簡単なゴールを作って少人数で遊びをし始めた。中には先程強引に入れられた土方くんや山崎くんもいた。



「うわぁ....。」



そこにはいつものだらけた姿や剣道で一瞬見せる真剣な顔とは違い、遊びを心の底から純粋に楽しむ男の子の顔をした沖田がそこにいた。


沖田ってあんな顔もするんだ。初めて知ったな。


そう思ったらまたドキンと胸は飛び跳ねるように鳴る。私の心臓はいつも異常に刺激に弱いらしい。



「おっ、いれた。すごっ!」



ゴールと決めた枠にボールを入れたのは私に刺激を与える張本人、沖田だった。自然に口から歓喜の声が漏れた。


すると沖田は私の方を見てグッと親指を立てた。私はうんうんと頷きながら小さな拍手をした。その瞬間歯を見せて笑った沖田は再びピッチへと戻っていった。


その姿にまた心臓は跳ねる。心臓に悪いとはまさにこの事だと思う。


ぐううっと胸を押さえながら沖田に言われたとおり、その遊びを見続ける。



「あ、土方くんいれた。」



敵チームなのだろうか、沖田と入れた逆側のゴールにボールが転がる。本当みんなスポーツはなんでもできるんだな、と感心してパチパチとまた小さな拍手。


どうしてあんなにスポーツができるのだろう、やっぱりイケメンはなんでも出来るという法則でもあるのだろうか。


そう考えていてふと我に返り、視線が沖田を探すと



「あれ、いないし。」



そこに沖田の姿はなく代わりに山崎くんが入っていた。


なんだ、見ててって言ってたくせに。トイレにでも行ったのかな。


ボーとまたその遊びを見ていると、ドタドタと走る音が聞こえた。私には関係ない音だ。


そう無視をしているといきなりガッと肩を掴まれた。



「凛華先輩っ。」

「お、沖田.....!?」



そこにいるのは目で探していた沖田が息を切らしてそこにいた。ここは3階。あの短時間で中庭からここまで来たとすると相当ダッシュしたに違いない。



「どうしたの、ここまで。そんなにトイレ漏れそうだったの?」

「んなわけ、ねーじゃねェですかィ。なんで、わざわざ3階まで。」



はあはあ、と息を整えながらゆっくりゆっくり話始める。



「凛華先輩、鈍い。」

「え、何がよ?ちゃんと見てたでしょう?シュートすごかったよ!」

「俺がすごいのは当たり前でィ。」



うわ、こいつ自分の事自画自賛し始めた。


だいぶ息が整え終えた沖田は「じゃなくて」と否定する。



「見てて、て言ったじゃねェですかィ。」

「だから沖田のことずっと見てたよ?」

「本当に?」

「本当だよ。」

「じゃあなんで土方の野郎のシュートに反応したんでィ。」

「え、そりゃあすごいと思ったからでしょう。」

「ほら、よそ見してたじゃねェですかィ。」



腕で口元を覆い、横を向く。あれ、こんな表情する沖田初めて見たかも。私の知ってる沖田はどこか大人っぽくて隙がないドSなんだけど。


今はなんだか、拗ねた子供みたいで。


そう考えたとき、ガッと腕を掴まれた。そして真剣な目をして私を見る沖田から目を離すことが出来なくなっていた。



「凛華先輩は、俺だけを見てればいいんでィ。」



沈黙が暫く流れ、先に口を開いたのは沖田だった。


わかったかィ?という沖田の言葉に私はただただ頷く事しかできなかった。


そして彼はパッと腕から手を離し、早歩きで廊下をかけていった。


私はその後ろ姿を顔を赤くして目を丸くしたまま見つめていた。







よそ見しないで



「あ、沖田さん!どこに行ってたんですか.......って。」

「......んだよ。」

「どうしたんですか、その顔。まっk」

「ザキ死ね。」

ドゴォォォォォォォォ

「ぐぼぉぉぉ!?ボールが顔にめり込んだァァァ!!!」




タイトル「先輩は僕だけを見ていればいいんです」



 
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