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「総悟ォォォ!!!待てゴラァァ!!」



ダダダッと大きな足音を立てながら鬼の形相で追いかけてくるのは、土方マヨネーズ野郎。全く、人が昼寝をしている時に押しかけてくるものだから困った奴だ。俺は口笛を吹きながらそいつから逃げていた。


マヨネーズ野郎は片手に大量の紙を持って俺を追いかけてくる。多分、いや絶対俺の器物破損の反省文や賠償請求などとにかく全て俺関係のことだ。



「今日という今日は絶対ェに許さねェェェエエ!!」

「別に許してもらうつもりでやってるわけじゃねェやィ。」

「尚更タチ悪いわァァ!!少しは自分のしたことを反省しろ!!」

「俺がしたことがあんたに過労として乗っかかってんなら作戦成功なんで、反省点はありやせん。よし、次もこの作戦で行くか。」

「てめ、上等だゴラァァァ!!!」



別に嘘なんか言ってねェのにマヨネーズ野郎は俺の言葉で更にヒートアップをして走るスピードを早めた。俺もそれに合わせて少し走るスピードを早める。


縁側を曲がり曲がりに曲がるが、さすがは普段生活している場所。もう慣れた場所で目を眩ますことはできないみたいだ。


なら、方法はひとつ。



「あ、ザキー。そんなとこで何ミントンしてんでさァ。」

「げっ!お、沖田隊長!」



そこにはコイツの隠れ家であるミントンする場所。ここならマヨネーズ野郎の目を届かないだろうと考えていたらしい。ふっ、甘いな。俺が今教えてやったぜ。


俺を見つけたザキは片眉をピクピクと痙攣させ、そして俺の後ろにいる奴を見て今度は顔を青白くさせた。



「山崎ィィィ......。」

「ふふふ、副長!!!?」

「お前は勤務時間に、何してんだァァ!!」

「やっ、これは、あの、その.....ギャ、ギャアアア!!」



あばよ、ザキ。そう心の中で呟いて山崎をボコボコにするのに夢中なマヨネーズ野郎を鼻で笑い、屯所の塀をひょいと飛び越えた。


塀を越えるとちょうど人はおらずあまり注目されなくてすんだから少し安心。俺はそこから早足で歩く。耳に入るのは爽やかな風の通り過ぎる音と少し遠くから聞こえる子供の声。意識すれば色んな音があちこちから聞こえてくる。


もう、ここらに来れば平気だろう。そう思った頃に早足を止め街をフラフラと探索した。平日なのにも関わらず人は多かった。



「沖田...?」



そう声をかけられたので振り向いてみると、そこには両手に大きな荷物を抱えて持つ凛華と....



「あんれー、総一郎くんじゃねェの。」

「総悟です、旦那。」



相変わらずの天パに怠そうな雰囲気。ヘラヘラと笑って凛華の後ろから出てきたのは万事屋の旦那だった。彼の両手にはこれまた大きな買い物袋がぶら下がっている。



「どうしてふたりがこんなところにいるんでィ。」

「ちょっと買い出しを頼まれてね、少しだからひとりでいいやって思ってきたんだけど案外重たくって。」

「そんな時に白馬の王子様、坂田銀時がこの重たい荷物を持つのを手伝おうと声をかけ「もういいです。」」



なんとなくその先の展開が読めたので旦那の話を途中で遮る。てか自分の事白馬の王子様って...。頭の中だけじゃねーの真っ白なのって。あ、髪の毛もか。



「おいおい、髪の毛は銀色だから。」

「人の心読むなんて痴漢で逮捕しやすぜ。」

「いやいや、全部口に出てたからね!?」



ガサガサ、そう大きな音を出す買い物袋をちらっと見る。そして溜息をつき旦那の両手から買い物袋を奪い取った。持つとわかったが意外に重い。これを今まで軽々しく持っていた旦那にイラッとくる。


ちらりと中身を見ると中の殆どはマヨネーズだった。さっきの野郎の顔が思い浮かび、また新たな悪戯が思い浮かぶ。よし、帰ったらすぐ実践だ。



「じゃ、旦那。ここまでありがとうごぜェやした。」

「え?ここまで持ってきたのにお礼なし?」

「旦那、白馬の王子様はお礼なんて強請りやせんぜ。」

「ちぇっ。」



子供みたいに口を尖らせる。いい年こいたおっさんがどんなに子供みたいに口を尖らせても可愛くなんてないのに。



「凛華ちゃーん!今度遊びにこいよー!」

「はーい!ぜひお邪魔しに行きまーす!」



ふたりでニコニコ遠くで叫びながら会話して、凛華は俺の隣に並んだ。隣に並んだ今でもニコニコとしている凛華を見てなんかむしゃくしゃする。くそ、大人になれ俺。


空いている片方の手で前髪をクシャと上げる。その時自然と皺を寄せている眉間に気がついた。大人気ない俺に少しイライラする。無意識に歩幅も大きくなっていた。


前を向いて歩いていた俺はいつの間にか横に凛華がいないことに気がつく。後ろを見ると重たそうな荷物を持ちながらゆっくりと歩いていた。



「おせェ。」

「沖田が歩くのが早いんだよ。」

「足が長くて悪かったな。」

「何それ。今全世界の短足を敵に回したよ。」

「恨むんなら自分についてる短足を恨みなせェ。」

「くそう、今に見てろ。」



うんしょうんしょ、と掛け声と一緒に持ち運ぶ。俺は溜息をつき今度は凛華の横に並んだ。そして一番中身の入ってて重たそうな荷物を奪い取る。



「あっ.....!」

「ほら、行くぜィ。」

「ちょ、悪いからいいって。」

「いいから、ほらその短足でちゃんと歩けィ。」

「もう!短足を馬鹿にするなよ!」



そう言って凛華は少し軽くなった荷物を持って先々歩く俺の隣に並んで重たい荷物の片方の取っ手を持った。ぶらんと重たい荷物は俺と凛華の間で間抜けにぶら下がる。



「これなら沖田が私を置いてくことはないでしょ?」



そう言ってにっこり笑う凛華に「元々置いてく気なんてねェ。」なんてそんな甘ったるいことは言えない。言うとしたらそれは俺じゃない。俺じゃない誰かだ。


顔が熱いのを誤魔化すように前を向き、歩く。サワサワと草々が擦り合い出している音や街の賑わう声、音がまた耳を通り過ぎている。



「幸せだなぁ...。」



そう呟いて再び俺に向かって笑う凛華に、俺はちゃんと綺麗に笑い返せただろうか。







隣ではんぶんこ



「ねえねえ、旦那ってどんな人なの?」

「旦那?そうだねィ......、芯の曲げない侍。」

「へえ、侍かぁ。面白い人だったね。」

「存在が面白い(無茶苦茶するから)人だからねィ。」



 
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