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今日もあと数時間で終わるこの頃。わたしはあの例の雑誌を読み返しながらふと思う。
もしかしたらわたしが思ってる以上に沖田に愛されてんじゃないか。わたしも勿論大好きだけど。愛してるは少し恥ずかしいからな。
とにかくここで雑誌に書いてあること試すの終わってもいいかな、ふふ。そう思っていたのはつい最近のこと。
その考えはどこかへ消えた。
「おはよ沖田!」
「......はよ。」
「ふふっ。」
「......なんだお前。気持ち悪ィ。」
「いや、沖田はやっぱり優しいなって思ってさ。」
「は?今頃かィ?」
「へへ、今頃でしたー。」
「......ふーん、じゃあ焼きそばパン買ってこいよ。」
「は?」
「今頃俺の優しさに気付くとは何様でィ。罰として焼きそばパン買ってこい。」
「ま、待て待て。話が噛み合ってない気が...。」
「買 っ て こ い 。」
「いいい今すぐ行ってきまーす!!!」
という仕打ちに合ったのがあの出来事の1週間後。てかツッコミどころ色々ありすぎて困る。普通彼女をパシりに使うか。結局わたしの奢りだったしチクショー。
ということがあったので冒頭に書いてあったことは無しで。また実行します。
荒々しい手つきでページを捲る。そしてあの例のページを開き穴が開くんじゃないかってくらい見つめる。
3.たまにはやり返してみなさい
「や、やり返すだと...?」
目が点。いや、本当に点。あのドSにやり返すだと?
あのサディスティック星から来たと恐れられる程の超サディスティックの奴にやり返す?頭が回りすぎて少し気分が悪くなった。
「......やってみよっか。」
頭の中に思い浮かんだことを少し不安に思いながらも、瞼を閉じた。
「お、おはよ。」
「......おお。」
ふああ、と自転車に股がり大きな口を開けて欠伸をする沖田。彼は朝いつもどんなに眠たくても必ずわたしの家の前まで迎えに来てくれる。
全く優しいんだかドSなんだか。
だが今日もわたしは優しくない。沖田には悪いけど今日わたしはひと味違うんだ!
「早く乗れ。」
顎で自転車の後ろを指す。いつもなら問題なく乗るが、
「いや、いいわ...。」
「は?」
「今日、歩いてく。」
「......ダイエット?」
「別に。」
少し悪きもしながら沖田に冷たく当たる。
沖田が悪いんだからね、いつもわたしを苛めるんだから。少しぐらい懲りてもらわないと。
「それじゃ。」
「......。」
ボケッとした沖田の顔を横目で見ながらわたしは軽やかに歩き出した。
あぁ、なんて心地いいんだろう。
その時後ろからガシャガシャと自転車の音がする。もしかして急に冷たくなって不安になったのかな、懲りたのかな。それなら作戦成功だ。
「うふふ。」
ひとり呑気にスキップを踏みながら歩いていたら後ろからシャーッと音がした。追いかけてきてくれているのだろうか。
その音は徐々に近くなる。段々と耳に入ってくる音が大きくなり、そして
シャーッ
「え?」
沖田は止まるどころかわたしのこと目もくれず涼しい顔で横を通りすぎた。
あまりの驚きに呆気にとられていたわたしの何メートル先に止まり振り向いた。
「8時19分。」
「は?」
「今、8時19分。」
嘘、そう思って携帯を開いた。時刻は19分を過ぎ20分を指していた。
このままいけば間違いなく、
「遅刻でさァ。」
「!」
青冷めた顔を沖田に向ける。彼は自転車に股がりながら余裕の笑みを浮かべていた。
こいつ、確信犯だ!
「じゃ、俺はこれで。」
「あ、ちょ、待ってェェェェ!!!!」
これはこれである意味ダイエットになったかもしれない。けどわたしがやりたいことは達成できなかった。
くそ、やられた
「ぜぇ、はぁ、ぜぇ。」
「はい、姫路野遅刻ー。お前どうしたの今日。いっつも総一郎くんと来んのに。喧嘩でもしたか?」
「い、いや、ちょ、ちょっと、色々、やられまして。」
「やられた?ヤられたのか?」
「か、片仮名違うゥゥゥ!!!!」
「え?お前らまだなの?」
「こんの、セクハラ教師ィィィィィ!!!!」
「(......ニヤリ。)」
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