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「く、くっそ。なんて手強い野郎なんだ...。」



ぼふっとベッドに沈む重たい体。元々重たい体が更に重たく感じる。あれもこれも全てサディスティック星の王子のせいだ。


あれから雑誌に書かれていたこと(何事も笑顔で耐えること)を王子に試しても全て交わされる。それはそれは器用に交わされるのでやっている不器用なわたしは腹が立ってきた。これだから器用な人間は。



「......。」



顔を横に向けると目についた雑誌。これは先日買ってしまった例の雑誌だ。


手を伸ばしパラパラと開くと自然に開いたページを見る。そこにはわたしが買った理由であるコーナーが開いていた。


体を起こしページを見る。このページには昨日実行したものがある。わたしは文字をなぞり溜め息をついた。そして再びベッドに顔を埋める。



ピルルルルッ



「?」



突然鳴り出す携帯電話。そういえば何時だと時計を見てみればもうあの時間。やばい!と焦り慌ててポケットにある携帯電話をとる。



「も、もしも「遅い。」」

「は、ははっ。」



言葉を遮り吐いた短い低い言葉。その言葉を方頬をひくひくさせながら受け取った。



「す、すみません。疲れてて...。」

「あ?」

「だからごめんって。」

「3コールで出る約束だろィ。」

「それ会社とかのルールでしょ。」

「俺らのルールでもあるだろィ。」

「いつそんなルールができたのよ!」

「付き合った瞬間から。」

「......そ、そうですね。」



改めて彼氏の方から付き合うとかなんとか言われると恥ずかしくなるのはわたしだけだろうか。なんだかとても照れくさい。


きっと真っ赤であろう顔を手で覆いながらベッドに丸々ように転がる。



「あ、そういえば試合どうだった?」



試合の方は結局友達に遊びを誘われて行かなかった。行ったらわたしの何かが大変なことになりそうだし本人も来てほしくなさそうだったから。



「勝った。」

「よかったじゃん!おめでとう!」

「......お前っていっつも勝ったら喜ぶよな。」

「そりゃあそうだよ!勝つってことは簡単なことじゃないんだから。」

「簡単だった。」

「でもその分練習したでしょ?」

「してねー。」

「またまたあ、嘘ついちゃって。夜遅くまで頑張ってんの知ってるし。」

「......馬鹿。」

「また馬鹿言われた。だからわたしは馬鹿じゃないって。」

「いや、馬鹿だろィ。」

「......違うって言ってるのにー。」



聞かない耳を持つ彼は馬鹿とただ一言呟いている。



「あ、そういえば今日ね、」



突然今日のことを思い出して晩御飯やお風呂に入るのも忘れてペラペラと話す。今日友達がね、あと昼休憩にね。こういうことは器用にペラペラと話すことができる。


それを話している途中に気がついた。



「でね!わたしがそこで、」

「......うん。」

「沖田...?」

「......あ?なんでィ。」



返事がワンテンポ遅い。それに返事もとろーんとしていて、これは。



「眠たい?」

「......べ、別に。」

「嘘。絶対眠たいでしょ。」

「......嘘、じゃねー。」

「いやいや眠たそうだから。寝ていいよ。なんかごめんね、話に付き合わせて。」

「......いいから、喋れィ。」

「でも、眠たそうだし。」



中々沖田が引き下がらない。わたしの馬鹿話を聞いていても何のメリットもない。しかもこの話は明日にでもできる話だ。今しなくても大丈夫なのに、引き下がらない。



「......やっぱりお前馬鹿。」

「え?え?」



はあ、と電話越しから聞こえる溜め息。どうして溜め息をつかれたのかわからないわたしは戸惑う。



「俺ァこんなこと絶対言うやつじゃねー。」

「え?言ってる意味がよくわからないんだけど。」

「柄じゃねーんでさ。わかるかィ?」

「え、はい?」



だから耳の穴塞いで聞けィ、そう一言彼は呟いた。わたしが耳を塞ぐ前に彼は言葉を放つ。



「お前の声聞きながら、寝てェんでさァ。」

「は、」



ボボボボッと火を放つんではないかと言うくらい真っ赤になる顔。熱くて熱くて本当に明日熱でも出るんじゃないかってくらい熱くて。いやいやそんなことより、



「あなたは、本当に沖田...?」

「......だから言いたくなかったんでィ。」



クソッと聞こえる耳までわたしは真っ赤になった。それは朝になるまで冷めることはなかった。







充分貰ってました



2.優しさが欲しいなあと呟いてみなさい

そんなこと呟かなくても彼から彼なりの優しさを貰ってました。

もう、お腹いっぱいです。



 
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