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「......ねえ、わたしのこと好き?」



お昼休憩、中庭のベンチでお弁当も食べ終わった俺たちはぼうっとグラウンドで遊んでいる奴らの姿を見ていた。


そんな時に言われた彼女からの一言である。



「はあ?」

「いや、だから、わたしのこと好き?」

「どうしたんだ急に。」

「...別に、なんとなく聞いてみただけだよ。」



俺はなぜ彼女が急にそんなことを言ったのかよくわからなかったが深くは追求しなかった。相手もまぁいいやみたいな態度とってるし。


そもそもそんなこと言われても俺はどこかの糖分でできた男じゃないからそんな「好き」とか甘い言葉はこの口からは出そうにない。


恥ずかしいのもあるがそんなことを言わなくても充分伝わっていると思うからだ。



「あ、総悟だ。」

「おお、あいつがグラウンドで遊ぶの珍しいな。」

「女に注目浴びるから嫌だとか言ってたのに。」

「そんなこと言ってたのか?女を雌豚扱いして笑うあいつが?」

「うん、この前話したとき言ってた。俺の好みのやつが近寄ってこないからつまんないってさ。」

「......ほォ。」



それ言われて気づけよ馬鹿、と思ったのは内緒。きっと総悟なりの配慮であろう。


しかしその話を聞いた時のこのモヤモヤ感。胸の奥底にある何かが渦巻いて口から災いが出てきそうなそんな嫌な感じ。


俺は口をぐっと閉じて堪えた。



「...トシ、大丈夫?顔真っ青だよ?」

「別に、平気だ。」

「本当に大丈夫?保健室行く?」

「...先戻ってる。」



彼女が心配そうに手を挙げたのをするりとよけ、弁当箱を手にとった。そして立ち上がりその場を立ち去る。


このモヤモヤを彼女にぶつけないようおさまえながら、ひとり寂しく中庭を歩いていった。




















「土方さん。」



そう呼ばれたのは部活の合間にある唯一の水分補給の時間の時。剣道場の横にある水道のところで補給し顔を洗おうとしていた。


呼ばれたのはいつもサボっていないはずの総悟だった。



「なんだ。」

「いや、ちょっと相談がありやしてね。」

「お前が?俺に?」

「そうでさァ。」



珍しく練習に参加していたのか剣道着で俺の横に腰を下ろし、いつもの声より低い声で話す。



「凛華のことなんですけどねィ、」



ぞわ、とその名前を聞いただけで背筋の方から悪いものが飛び出るのではないかってぐらいゾッとさせた。まさかこいつの相談って。



「今日、告りやした。」



どんぴしゃ。いや、前々からこうなることは予想できていた。していたはずなのにいざこうして報告されるとふつふつと俺の中の何かが沸上がる。



「...ほォ。それで、なんだ?」

「本当はずっと我慢してようと思いやしたが、」

「......。」

「あいつの泣いてる姿見て我慢できなかったんでィ。」

「は?な、泣く?」

「...まだわかんねーか土方コノヤロー。」



驚いて総悟の方を向いた瞬間にガッと胸倉を掴まれる。



「あいつが泣いてる姿見て大半の理由はてめーのことでィ。」

「!!」

「凛華は必死に考えて考えて、てめーの前では笑顔でいようと頑張って。」

「、」

「その姿、あんたは気づかなかったのかィ?」



「......ねえ、わたしのこと好き?」


朝言われたこの言葉が脳裏に蘇る。ひどく深刻そうに俺の目を見ないまま、下を俯いたまま言葉に出していた。



「それにあんた最近告白されたらしいですねィ。」

「...あぁ。」

「女にとっちゃそのことも不安の一つでさァ。」

「別に凛華がいるから振るに決まってんだろ。」

「てめーはそうかもしれねェ。けど、凛華は違うんでィ。」

「どういう、」

「ちったァ愛情表現しめせカス。」



ドカッと俺を投げ飛ばし総悟はその場を立ち去った。総悟の優しさなのか土のところに投げ飛ばされて怪我はない。


愛情表現をしめせ?俺が知っている限りたくさんしめしているはずだ。その度に凛華は赤くなったりして。



「好き...?」



「...あー、そういえば。」


俺、あいつに一回も言ったことない気がする。俺は何回も言われてて照れくさくなるときもあるけど心は自然とポカポカする。


これが、安心ってやつか。



「トシ!」



俺は蛇口を閉めるのも放置してその場を全力で駆けた。


 
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