( 1/1 ) 俺の毎朝の日課はレールを引かれたが如く決まっている。 それはもう真っ直ぐと引かれていて、その引かれた先には必ず彼女がいる。彼女は相変わらず可愛らしい笑顔で俺を待っていてくれるとかなんとかとにかく女子らしい彼女を見てみたいものだ。 午前6時30分 ピピピッという電子音と共に俺の目は開かれる。そして体を起こし思い切り背伸びをする。近くのカーテンを開ければ明るい日差しが差してくる。 そして下のリビングに降り家族に朝の挨拶。 「はよ。」 「おはよう。ご飯できてるわよ。」 テーブルの上に既に用意されているご飯を食べて、食べ終わったら洗面所に行って顔と歯磨きをする。大体ここまで30分の時間が掛かる。俺は仕度の半分を30分で終わらせた。 午前7時00分 2階の自分の部屋に戻る。制服に着替える前に俺は布団に放りっぱなしの携帯を手にとった。 そしてある番号に電話をかける。 プルルルルッ 何コール繰り返しても出る気配はない。思わず溜め息が出る。 虚しい機械音が鳴る携帯を布団に投げクローゼットにある制服を袖に通した。ネクタイをしながらカバンを持ち階段を降りていく。 「行ってくるー。」 「はーい、いってらっしゃーい。」 母さんの言葉を背に受けて玄関を飛び出した。 向かうところはあいつのところ。 「おはよーございます。」 「あら、十四郎くん。いつもいつも悪いねェ。」 インターホンを押して挨拶をしたらあいつの母親が眉を曲げて出てきた。これも毎朝の出来事。この後俺は「いいえ大丈夫です。」と言う決まりだ。 彼女とは幼馴染みというやつだ。幼稚園から、いやそれよりも前から俺の母親とあいつの母親は仲が良かったらしい。俺はいつも彼女と一緒で写真には必ず隣にあいつがいる。いつも隣にいたからかずっと隣にいてほしいという気持ちが大きくなりそしてそういう関係になったのはつい最近のこと。 これが終わったら家に上がらせてもらう。俺は真っ直ぐあいつの部屋へと歩いて行った。 そして勢いよく開ける。 ガチャッ 「凛華。」 呼んでも返事は返ってこない。その代わり小さな小さな寝息が聞こえた。彼女はまだ夢の中らしい。俺は彼女のベッドに近づき肩を揺すぶる。 「凛華、朝。」 「......んー、あと10分。」 「10分は長い。早く起きろ。」 「...じゃー、7分。」 「せめて1分だな。」 「...いやー。」 「それぐらい喋れんなら起きてるだろ。おら!」 バサッと布団を剥ぐ。彼女は眉間に皺を寄せながら小さな奇声を上げた。 「いやああ。」 「嫌じゃねーって。」 布団をそこら辺に投げて寝坊助の彼女の頬を掴み横に伸ばす。これはある程度力を抜いている。 「......いひゃいー。」 「目ん玉開けたら離してやるよ。」 「うー。」 もっと横に伸ばすが彼女は目を開く様子がない。 「起きろ。遅刻すんだろ。」 「......うーん。」 「おら、目ェ開けろ。」 「うーん。」 「鼻フックすんぞ。」 「いーやー。」 「やっぱやめた。キスすんぞ。」 「.......え?」 「なんだよ。キス初めてじゃねーだろ?」 「い、いや!そーじゃなくて!」 その瞬間、目が開く。ちっ、惜しかった。 「んだよ、開けたし。」 「だだだだってトシが!」 「いつもしてんだから平気だろ。」 「そーいう問題じゃない!」 「はいはい。ま、起きたんならいーわ。」 ポンッと凛華の頭を軽く叩き扉に向かって歩いた。ドアノブに手をかけたとき後ろから声が聞こえた。 「お、起こすんなら優しく起こして!」 その言葉に何故か笑いが出た。俺はその言葉に反応せず扉を開いて階段を降りていった。 朝は厳しく起こしてください 優しくなんて起こせない。 優しくしすぎたら怠けるからな。 たまには厳しくしねーと。 |