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あいつがどこにいるかなんて知りやしない。ただ直感であそこだと思った場所まで駆けていく。


途中先生の怒鳴り声なんかが聞こえたがそんなのはお構いなし。走るスピードは緩めるどころか加速していく。


目的地のドアに手をかけ、一気に開いた。



「え!?」

「はぁ、はぁ...。」



そこにはやっぱり凛華がいて、机の上に座り外を眺めていた。


突然ドアが開いたので驚いて慌てふためいている彼女に近づき、抱きしめた。


彼女の目は少し赤かったのが見えた。



「ト、トシ...。」

「悪ィ。」

「え、な、なにが?」



体を少し離しニコリと笑いかける彼女の目はまだ赤いままで。


それはその瞳にそっと唇を落とした。動揺している彼女が愛しくて愛しくて、感情が溢れ出す。



「え、あ、あの...。」

「凛華。」

「は、はい!?...ん。」



腰と後頭部に手を置き、逃がすまいとする。角度を変えながらお互いを欲していると凛華はギュッと俺の服を掴んだ。


その行動ひとつさえも俺を震わせる。


どちらからともなく名残惜しそうに唇を離し、俺は名前の手を握りながら肩に顔を置く。



「どうしたの、トシ?なんかおかしいよ...。」

「普通。」

「部活は大丈夫?」

「部活なんかより、お前といてェ。」



その言葉を聞いて凛華の体は硬直する。


あぁ、なんてわかりやすいやつなんだろう。俺もこんなに素直だったら良かったのに。



「凛華。」

「は、はい!」

「...総悟に、告白されたらしーじゃねェか。」

「え、」



顔を上げるとなんで知ってるのという顔が目の前にあった。「知ってほしくなかった」とでも目が訴えかけているみたいだ。



「だ、誰から聞いたの...?」

「本人から。」

「本人!!?」

「直接報告された。」

「な、なんであいつは、また...。」

「...で、どうしたんだ。」

「え。どうしたって?」

「振ったんだろ?」

「そ、そりゃあ、そうだけど。」



その言葉を聞いてホッとした俺がここにいた。なんかモヤモヤが少し晴れた気がする。


強ばった肩が徐々に楽な体制になる。俺はぐりぐりと肩に額をくっつけるとまた肩は強ばる。何回遊んでも飽きない。


あぁ、こんなやつだからこそ、こんな凛華だからこそ俺はいつまでも隣にいたいと思えるのか。



「凛華馬鹿。」

「はあ!?どういうことよ!」

「隙見せんなよ綺麗になるなよ。」

「え、え、何よ、急に。褒めても何も出ないよ?」

「...察しろ馬鹿。」



やばい、今の俺絶対顔真っ赤だ。らしくない言葉を並べて凛華に言ったから恥ずかしすぎて今なら涙が出るわ。



「凛華。」

「なーに?」

「一回しか言わねーからな。」



肩から顔をあげて凛華を見つめる。彼女の瞳は柔らかく、俺を安心させてくれる作用があった。


凛華はいつも俺に癒しをくれる。時々馬鹿なことはするけど、そんなこいつだからこそ俺は隣にいたいと強く思う。今もこれからも。



「俺には凛華しかいねーから。」



だから、この言葉で今は我慢してくれ。いつからはちゃんと言えるように練習するから。







愛情を示してあげてください



俺は今までこいつのお世話をするのが当たり前だと思っていた。

だけどお世話していたのは俺じゃなくて、彼女の方である。

きっとどこかで俺専用のマニュアルでも手に入れたのであろうか。

彼女の手のひらで俺は愛されていく。

また俺はその手のひらの上で愛情表現をしめそう。



 
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