( 1/1 ) 「や、はっ!!」
「はぁぁぁぁ!!」
パンパン パン
剣道場で竹刀がぶつかり合う音がする。それは部屋全体に響き渡り反射して自分の耳に返ってくる。
「はっ!!」
パーン
今までよりも高い音が響く。
「一本!!」
審判が俺の方の旗を上げる。相手は顔は見えないが体勢がひどく落ち込んでいるように見えた。
どうやらこの勝負、俺の勝ちみたいだねィ。
「礼!!」
「ありがとうございました。」
「ありがとうごぜェやしたァ。」
やる気のない挨拶をし自分の陣地へと戻る、その時相手側から会話が聞こえた。
「やっぱ強ェな、沖田総悟。」
「高校ん時も色んな大会を制覇したとか伝説があるし……。」
「でも一時期いなかった時あったよな?」
「そうそう、理由は定かじゃねーけどよォ。」
「けどこうして戻ってきて高校ん時より更にパワーアップしてると思わね?」
「確かに、断然動きが速ェし。」
「20歳になった今でもこれはやべーだろ。」
そんな会話を背に俺は歩いて行った。 姫路野凛華が未来へ帰り2年ちょっと。俺は高校を卒業し成り行きで近藤さんや土方さんと同じ警察学校へと進学した。土方コノヤローと一緒なのは気が引けたが。
そこで俺は剣道を続けている、昔も20歳になった今でも。
やはり高校ん時の噂が絶えやしねー。こんな会話を聞いていると俺は本当にすごい奴だったんだ、と思う。
2年ちょっと、という月日を過ごしても凛華は忘れられないし会いたいという気持ちは募るばかり。
しかし辛いという気持ちはなく寧ろ楽しみの方が大きかった。
早く凛華に今の俺の姿を見てもらいてー。
「総悟。」
「土方さん。」
後ろにはタオルで汗を拭く土方コノヤローがいた。
「次の試合までには水分補給しとけよ。」
「……へィへィ。」
よっこらせ、と立ち上がり水分を求め剣道場を後にした。
外に置いてある自分の鞄の前に屈み漁る。
「あったあった。」
キャップを開け飲もうとした時だった。
「こんにちわ。」
後ろから女の声が聞こえた。俺は勢いよく振り返る。
「沖田、総悟くんですよね?」
ニコリ、と笑いかけるそいつは。 「凛華……?」
「総悟くん。」
相変わらずの可愛らしい笑顔な凛華。俺は立ち上がり抱きしめた。
「悪ィ、俺今すげー汗くさいでさァ。」
「ううん、石鹸の匂いがする。」
そのまま暫し抱き合う。
「総悟くん、成長したね。」
「当たり前でィ。もう20歳だからねィ。」
「そうか、20歳か。」
「……凛華。」
「うん?」
「約束、覚えてやすか?」
「……うん。」
俺は凛華と身体を引き離し顔を合わせた。凛華は以前と比べて大人っぽくなっていたのに気がついた。
すぅ
はぁ
深呼吸をする。そして今まで喉に引っ掛かってた言葉を出す。 数々の時を越えて 言葉を放ったその時彼女は泣きながら頷いてくれた。
恋、を知るのが恐かった臆病な俺達は今結ばれた。
いつの間にか空は夕暮れで、オレンジ色が俺と凛華を優しく包み込んでくれていた。
まるで俺達を祝福してくれているように。 もどる
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