( 1/1 ) あれから俺は週に2回部活に出ることにした。
体の方は鈍っていなかった。むしろ絶好調だが毎日部活に出れる気分ではなかった。
剣を振ると思い出す姉上の笑顔。それが頭に過ぎり泣き出したくなる。シスコンだと思われていい。けどこんな調子で迷惑かけるのはやるせない。
「総悟、次移動教室だぞ。」
「次はなんですかィ?」
「生物だよ、生物。」
「……仕方ねー、行きまさァ。」
机の中から授業道具を出し、それを怠そうに持ち教室を出る。
「ふぁ……。」
大きく欠伸をする。
「あ、総悟君!」
突然名前を呼ばれ振り返る。そこには姫路野がいた。
俺はすぐ土方さんに先に行くよう伝え姫路野に近づく。姫路野も友達といたらしく先に行くよう伝えてわかれた。
「姫路野じゃねーかィ。」
「姫路野です!総悟君移動教室?」
「あぁ。生物なんだとよ。」
「そうなんだー。だから面倒臭さそうなんだね。」
「オウ。生物は眠てェから。」
「うーん。じゃあ1時間授業真面目に受けたらご褒美あげるから!」
「……まじで?」 「まじで。用意しとくね。」
それじゃ、と言い姫路野は去っていった。
褒美が物なのは残念だがやる気は出た。なんせ姫路野から褒美が貰えるのだから。
「ぜってー寝るもんか。」
俺は廊下を走って行った。
――――――――………
「総悟、お前珍しいな。」
「何が?」
「何が、てお前生物ずっと起きてたじゃねーか。」
「俺だってたまには真面目に授業受けるんでィ。」
「ほォ。いつもこうなら面白れーのにな。」
そう言ってニヤニヤする土方。うざってーな。
「土方、死ね。」
「んだとコラァァァァ!」
隣でぎゃーぎゃー騒ぐ土方さんを無視し俺は窓を眺める。
「……土方さん。」
「あ?」
「先、教室帰ってて下せェ。俺ァ忘れモンしたんで。」
土方さんに荷物を押し付け俺は走り出した。後ろから叫ぶ声がするが全部無視した。
「はぁ、はぁ。」
階段を一気に駆け降り、長い長い廊下を真っ直ぐ突き抜ける。端っこまで行ってドアを開け外廊下に出る。そこをまた更に真っ直ぐ突き抜け右に曲がると。
「姫路野・・・っ!」 「え?」
外廊下を歩いている姫路野がいた。
「総悟君どうしたの?そんな息切らして。」
「いや、外、見たら、姫路野が、いたから。」
すぅー
深く深呼吸をする。それを何回か繰り返し息を元に戻す。
「褒美、もらいにきた。」 君の姿、とらえて そう言うと彼女は笑い俺の掌に飴玉をひとつ乗せてくれた。
「私の好きな味。誰にも渡したことないんだ。総悟君だけ特別だよ。」
俺はその特別を口の中へと放り込む。
甘酸っぱい味がした。 もどる
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