( 1/1 ) あれ以来俺達は一緒に帰っていた。どちらが誘うこともなくただ偶然を装って。
場所は校庭の隅にある花壇。なぜかはわからないがいつもその場所で待っているあいつを見ていつしか俺もそこで待っていた。
放課後、綺麗な夕陽が教室の窓から入ってくる。
「もうこんな時間じゃねーですかィ。」
あいつは科学部に入っている。部活が終わるのがちょうどこの頃らしい。
俺は駆け足で花壇のところまで行った。そこには既にあいつがいた。
「悪ィな。」
「大丈夫。今来たところだよ。」
そう言ってふたり歩き出す。
姫路野の側にいるとすごく落ち着いた自分がいる。理由はわからないが気分が楽になれるというかなんていうか……。
とにかくコイツといるのは苦じゃない。それをつい最近知った。
「総悟君。」
一緒に帰っているうちに姫路野は下の名前で呼ぶようになった。俺は相変わらず苗字だけど。
「なんでィ。」
「……部活、まだ行ってないの?」
「あぁ。剣に迷いがあるのに握っちゃいけねーと思うんでィ。」
「そっか!総悟君らしいよ。頑張ってね。」 「おう。姫路野はそんなに俺の剣道姿が見たいんでィ?」
「うん!だって総悟君すごく剣道強いじゃない?」
「へー、よくご存知で。」
「そりゃあどうも。」
ニヘ、と笑う。俺はこの笑顔が最高に可愛いと思う。本人には言ってないけど言ったら絶対顔を真っ赤にするんだろうなー。
「えへへー。」
「どうしたんでィ。」
「いやー総悟君が剣道する姿を思い浮かべて。」
「妄想癖やばいですねィ。いい精神科紹介しやすぜ。」
「妄想癖とか!!ひどいわ!!」
「いや、事実だし。」
こうしてまた一日の唯一の楽しみ、放課後が終わる。 最近の楽しみ また明日、あそこの花壇でお前を待つ。
たったの数十分のことだけど俺の楽しみが詰まってるこの感じ。
姉上がいた時以来だ。 もどる
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