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姉上が亡くなった数日後のことだ。


部活にも出る気にならない俺は行きつけの駄菓子屋に足を運んでいた。この行動に対して近藤さんは「気持ちが落ち着いたらまた復帰して来い」と言っていた。正直その優しさが痛い。


ふぅ


ひとつため息。


「あらあら総悟君。ため息なんかついたら幸せ逃げちまうよ。」


駄菓子屋のおばちゃんが微笑む。


「いんでィ。幸せなんざとっくのとうに逃げやした。」


お金をテーブルの上に置きその場を後にする。手に持っているのは姉上が好きだった『激辛せんべい』。


そこら辺の草むらに寝っころがり、袋を開け口に突っ込む。口の中に辛いのが広がった。


目から滴が流れる。滴は頬を伝い草むらの方へと落ちる。


「………。」


俺はいつの間にこんな弱虫人間になったんでィ。


姉上の葬式では泣かなかった、泣けなかった。不思議と涙が出ずただひたすら目の前で流れる光景を他人事のように眺めていた。


バリッ ボリッ


がむしゃらにせんべいをかじる。口の中は既に戦闘不能の状態。それなのに口を動かすことを止めない。
 
 
そんな時だった。


「……沖田、君?」


後ろの方で声がした。体を起こし確認する。


「誰でィ?」


「沖田君だよね!?」


ズンズンと彼女は俺の方へとやってくる。そして隣へ座り俺を見つめる。


「……沖田総悟でさァ。あんたは誰?」


声も聞いたことのない奴。そんな奴が話し掛けてきた。あの制服は銀魂高校。つまり同じ学校だ。


「あ、私は姫路野凛華って言うの。よろしくね。」


そう言って俺が持っていた激辛せんべいを取り上げ食べた。


「辛ァァァァ!!」


「なんでさァいきなり。隣に来てせんべい食って文句言って。
帰りなせェ。今の俺は虫の居所が悪いんでィ。」


そう言い、ギロリと姫路野凛華を睨む。しかし彼女は臆する事はなかった。


「放課後はいつもここにいるの?」


「あんた話聞いてやしたか?俺は今」


むぎゅ


俺の言葉は続かなかった。何故なら彼女の両手が俺の頬を押していたからだ。


「そんな目をしないで。自分を責めないで。貴方は優しい人、本当に、心優しい、人だから。」


ぐすっ


「そんな、悲しい、目、しないでぇ。」
 
 
彼女の目からたくさんの涙が溢れていた。それは止まる事を知らず下へ下へと落ちていく。


「お、おい。どうしてお前が泣くんでィ。」


「ごめ、ん。本当は、沖田、君が、泣きたいのにね。うぅ。」


ズカズカと俺の心の中に入ってくる。初対面なのにどうして、こう、遠慮がないのだろう。


とりあえず彼女が泣き止むまでその場にいた。
 
 
 
 
 
 
 
変な女
 
 
 
 
 
 
 
彼女はさらりと姿を現した。

そして俺が最も1番欲しかった言葉「自分を責めないで」をくれた。

第一印象は変な女。しかしその日から彼女を目で追ってしまう。

 
 
 
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