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わいわい がやがや


「………?」


今日は一段と教室が騒がしい。


みんなある本を持って手を見て叫んだり喜んだりしていた。


そう、我が学校では手相が流行っていた。


もちろんあの人も。


「ヅラやべーじゃねェかよ、生命線超短けー。」


「ヅラじゃない桂だ!生命線など俺には関係ない。手相など信じん。」


「じゃあなんでチラチラ手ェ見てんだよ。」


「こ、これはだな……。最近手汗が気になっているのであり決して手相が気になるということではない。」


「アッハッハッハ!最後本音漏れとるきー!」


「うるさいぞ坂本!」


こうして彼らはまた教室の隅でギャアギャアと騒ぐ。


いつ見ても思うけど、楽しそうだな。なんか青春て感じがする。


私は無意識にぼーっと彼を見ていたのに気づく。これでは盗み見がガン見になってしまう。


慌てて目を逸らしたが、


「姫路野さーん。」


遅かった。


「な、なに坂田くん。」


上半身だけを坂田くん達に向ける。もちろん坂田くんだけでなく他の三人の目線も感じた。


「坂田くんだァ?まだ上で呼ぶやつがいんだな。」


「あんま聞かんけーのォ。」


「あー、確かに。なんか最近違和感感じると思えばそれだ。」


坂田くんは手の平をぽん、と叩く。


「姫路野さん、俺のことなんて呼びたい?」


私に近くに来て、しゃがんで聞く。坂田くんだけでなく他のメンバーもぞろぞろと私の周りに集まる。


な、なんて濃い集団なの!?


「あー、と、その、うーん。……なんでもいいかな。」


「お主なんでもいいのか。」


「いや、とくに呼びたいあだ名とかないし……。」


ていうか坂田くんは坂田くんだし。


私はひたすら悩んだ。しかしその悩みを吹っ飛ばす発言を坂田くんは言った。


「じゃあ、呼び捨てな。」


「え。呼び捨て?」


「そ、あだ名はもう言われ飽きたから呼び捨て。」


「………坂田?」


「ちげーだろォォ。」


坂田くんは自分の頭を抱えくしゃくしゃにした。そして人差し指を私に向ける。


「リピートアフタミー。」


「イ、イエス。」


「銀時。」


「ぎ、ぎん、とき。」


「オーケーオーケー。今日からそれな、凛華。」


「!」


え、いま私名前呼ばれた?あ、夢か幻聴か。私いつ耳掃除したっけ?


「固まってっぞ。生きてるかー凛華。」


ゆ、夢じゃなかった。


「……生きてます、ぎ、とき。」


「なんだよ、ぎときって。俺は銀時だっつーの。もう一回リピートアフタミー。」


「え、あ、」


「銀時。」


「……ぎ、ぎ、とき。」


「ノーノー、銀時。」


「ぎんと、き!!」


「ぎんとっきじゃありませーん。ワンモアー。」


それから私は坂、銀時と呼べるまで授業中も休憩時間も関係なく練習させられた。


結局その放課後まで合格がもらえなかった。
 
 
 
 
 
 
 
君との距離、約サンセンチ
 
 
 
 
 
 
 
ここまでいったらクラスメイトから友達に昇格したと思ってもいいかな?

ねえ、私って銀時のなにかな。

 
 
 
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