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「へ......、へくしょん!!」
鼻の奥がムズムズするこの季節。私はマフラーを口を隠すまで巻いている。
はあ、と息を吐くと白い気体が空に消えていく。特に朝は冷え込みが半端ない。
「凛華、風邪?」
隣にいる私の友達が心配そうに尋ねてくれる。
「ううん、ズズッ。風邪じゃないと思う。」
「気をつけなよ、風邪引いたら……会えないよ?」
ニコリと笑うその笑顔には少し意地悪さが入っていた。
「そ、そうだった。」
私が会いたい、というか元気の源というか学校に来る理由、かな。
「ねえねえ。まじであの人のどこが好きなのよ。」
「え、」
言われてみれば正直どこが好きなのか、さっぱりといっていい程わからない。
特に理由はない。ただ顔がいいとか性格がいいとかじゃなくて。
「惹かれる部分があったから?」
「その部分を好きって言うんじゃないの。」
「でも、よくわかんないんだよね。」
「……まあ、よく言うじゃない。好きに理由なんかいらないって。」
「え、じゃあなんで聞いたのさ。」
「好きになった理由が聞きたかったから。」
「なんだよそれ。」
寒い寒いこの頃、私達はガールズトークというカイロで暖まりながら通学路を歩いていた。
学校に入ってもやっぱり寒いけど、外よりかは断然マシで。
友達と違うクラスで別れて私は自分のクラスに入る。
席に辿り着き背負っていたリュックを机に下ろし身に着けていた防寒グッズを取る。
「お前ェまじかよ。」
どきん
その言葉に体が反応する。声は教室の端っこからしていた。
気づかれないように目を向ける。
「だからお前ェはいつまで立ってもヅラなんだよ。」
「ヅラではない桂だ!」
「どっちも変わんねーよ。」
高杉くん、桂くん、そして坂田くん。彼らは小学校時代からの幼馴染らしい。彼らの他に坂本くんもいるが彼はどうも朝が苦手らしく遅刻が日常茶飯事。
私は高杉くんや桂くんの奥で怠そうに座って笑っている坂田くんに目を傾ける。
世にも珍しい地毛の銀髪に生気の見られない目、そして赤い瞳。そう、私が今気になる人。
しかし、
「ねえねえ坂田くーん。」
「遊ぼうよぉ。」
「あ、高杉くんは?」
「桂くんもどう?」
「えー、辰馬はぁ?」
ルックスがいいのかそれとも性格がいいのかよくわからないが、彼らはものすごく女子にモテる。
だから別にこの恋が叶うとは微塵にも思わない。てかそんな夢見れない。
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