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「総悟総悟!」


「なんでィ。そんな慌てなくても置いていきやせんよ?」


「あ、あのね、」


「?」


「実は、」


「早くいいなせェ。」


「ああああ!!待って待って!行かないで!!言うからァァ!!」


「じゃあ言え。」


「え、えと。私ね、そそそそ総悟のこと、す」


「す?」


「すすすすすすすすす!!」



ジリリリリ


頭上から鼓膜が破れるのではないかというぐらいの音がなる。


私はすぐにそれを止め布団から上半身を起こす。そして深いため息を漏らす。


「(私は夢の中でも告白できないチキンヤローだ…。)」


この夢を見るのは今日が初めてでない。ふとした時に見る。パターンはやはりその日その日で違っていてしかもかなりリアル。


「んあああー!!くそっ!!」


頭を掻きむしり私は着替えるべく布団を出た。


あ、とその前に。


寝巻を脱ぎハンガーに掛けてある隊服をとり袖を通す。


私、姫路野凛華は真撰組零番隊隊長、またの名を暴れん坊隊長。
 
 
出身は武州。だから近藤さんやトシ兄、総悟とは幼なじみ。特に総悟とは近藤さんの道場に入る前からの幼なじみ。


私の親の両方ともかなりの金持ちだったと聞いた。お互い惹かれあったが、結婚は望まれておらず駆け落ちをし武州まで来た。その時に沖田家に出会ったらしい。


しかし私が生まれまだ間もない頃、私の両親は身に危険を感じ私を沖田家に預け去って行った。あとで聞いた話だが結局追っ手に追いつかれ殺されたらしい。


そして沖田家の両親も間もなく亡くなり私はミツバ姉と総悟と暮らし、近藤さんやトシ兄と出会った。


これが私の人生経路。


大きくなり私達は体勢を立て直すべく江戸へ来た。ミツバ姉を置いて。


そのミツバ姉も去年肺の病気が原因のため亡くなった。私の家族は総悟ひとりとなった。


不幸?とんでもない。


私は幸せいっぱいだ。確かに惜しい人達を亡くしたくさん泣いた。けど私がこうして生きているのは生きている人達と亡くなった人達のおかげ。


その人達の分まで幸せを感じなければならないのだろうか、そう思う。
 
 
 
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