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顔を上げ月を見つめる。月は醜い鬼を持つ私を明るく照らしてくれる。


今宵は満月。


まるでかぐや姫が月へ帰った夜のようだ。


「……もういっそのこと私も連れていってよ。」


そしたら総悟と一緒にいなくてすむし。何よりこの醜い鬼を持たなくてすむ。


否、そんなことはないだろう。


きっと離れたら離れたで悲しいし寂しいし。


「世の中矛盾だらけだァァァ。」


どかっ


後ろに倒れ込む。


「…………。」


「………え。」


後ろに倒れ込んだ私の視界に入ってきたのは、


「いつからいたの、総悟。」


寝癖をつけた総悟だった。


「凛華が縁側に座ったところからでィ。」


「つまり最初からね。」


よいしょ、と私の隣に腰を降ろす総悟。


そんな近くにいたら私、爆発しちゃうよ。


「……で?」


「へ?」


「何か悩みでもあるんかィ。凛華は。」


「な、なんで?」


「なんか深刻そうな顔してたから。」


サァァァ


私と総悟の間を夏風が通り過ぎる。


「悩みなんて、ないよ。」


「……そうかィ。ま、何かあったら俺にいいなせェ。俺は絶対凛華の味方なんで。」
 
 
言えないよ。あなたのことで悩んでるなんて、言えない。


でもその言葉、素直に嬉しい。


「うん、ありがとう。その言葉だけで胸がいっぱいだよ。」


「え?」


「へ?何かおかしなこと言った?」


「だって凛華、胸がいっぱいって。そんなペチャパイなのに…。」


「ここここここれは関係ないの!!例え話でしょ!!」


この後、総悟と少し雑談をして眠りについた。
 
 
 
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