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「(また、あの空だ…。)」


あの空。


あの時、銀さんと知り合うことのができた日の空模様。私にとって最高の天気であり、また最悪な天気だ。


空をしばらく眺めていた私は再び借りた傘を手に持ち、家を出た。


行き先は勿論、傘の持ち主のところへ。


「………。」


最近、思うことがある。


「また…会えるだろ?」


あの言葉を思い返す度に頬に体中の熱が集まるのがよくわかる。


「私はもしかして…。」


そこまで鈍感な女ではない。だからこの感情も知っている。人間誰しもが必ず体験するもの。


恋というやつだ。


自覚してくるとなんだか一安心した。が、頬が熱いのは未だに治らない。


ああ、そうか。私は銀さんに恋をしているんだ。でも何故?


彼と会ったのはほんの数日前。これは所謂、一目惚れというやつですか。そうなのですか。


オーバーヒートしそうな頭を冷やすため空を見上げる。


ぽつ


額に何かが落ちてきた。どうやら水らしい。


「あ、め……っ!!」


私は手に持っていた傘を差さずにどこか雨宿りになるところを探した。


走って走って走って。


やっと見つけた所は銀さんと出会った場所だった。


そこへ行きしゃがみ込む。そしてふいに涙がでた。涙は私の頬を濡らしていく。


雨は嫌いだ。あの時を思い出させるから。


それは一生雨とともに流れることはない。『それ』は私に染み付いてしまった。いや、染み込みすぎてしまった。


「……ふッ。うッぅ。」


「ごめん。」


「な、で、謝るの?帰ろ、よ。」


「……綺麗な曇天だな。」


彼は手を空に掲げた。そしてぎゅッと拳を握る。


「明日は、晴れかな?」



「や、」


思い出すあの光景。じわりじわりと染みを広げていく。


手に頭を置きうずくまった。


「凛華……?」
 
 
 
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