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「俺の息子はねい、攘夷戦争に参加していた。自らの意志でな。


そん時も時々連絡は取り合ってた。『大丈夫か?』とか『怪我治ったか?』とか。


んな時によ、アイツはそんなことより面白い話があると話してきた。


アイツはな、そいつに惚れたんだと。恋心とかじゃなくて男心で。


そいつは女だった。雪みてーな真っ白い肌に紫の瞳、真っ黒の髪。女は凛華と名乗っていた。」


「………凛華。」


「彼女はな、滅法強かったんだと。だからな息子が聞いたらしい。どうしてそんなに強いのだと、どうして女なのにこの戦争に参加してんのか、と。


そん時息子は殴られたらしい。で言われたんだと。


『女だから参加してはいけないと誰が決めた。この戦争(なか)では男も女も関係ない。強き意志を持つ者こそが勝つのだ。』てな。」


「………。」


「息子はそれからソイツについてった。だかな、ある日連絡がプツンと途切れちまってな。信じたくなかったけど信じなきゃいけねー時が来てしまった。


んな時、ひとりの女が死んだ息子を背負ってここまで来たんだ。


凛華ってヤローなのがすぐにわかった。アイツは息子を降ろし涙を流しながら土下座してたさ。


『ごめんなさい、ごめんなさい。私がもっともっと強ければ雄太郎はこんなことにならなかった。こんなところで死ななかった。』ってよー。


ありゃ酷かった。自分も傷とかひでーくせによォ。


俺ァ息子が帰ってくるとは思わなかったから背負ってきてくれた凛華にゃ感謝しきれねー。


それから戦争が終わりアイツは俺の店の常連客になったとさ。」


「笑えねー昔話だなオイ。」


「誰も笑える昔話とは言ってねーぞ。」


「………、だな。」


「ん、うぅ。」


横にいる女、凛華が眉間にしわを寄せる。


「そろそろ起きそうだな。じゃあゆっくり話しな。どうせ帰れねーしな。」


外を見ると怪しい雲行きが雨雲へと変わっていた。
 
 
 
 
 
 
 
昔話は笑えねー
 
 
 
 
 
 
 
どうやら雨はしばらく俺達を帰さない魂胆らしい。

上等じゃねーの。

欝すらと瞼を開ける凛華に俺は向き合った。

 
 
 
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