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ワイワイ ガヤガヤ


「いらっしゃーい!」


「このお店寄ってってえ!」


「たーこー焼ーきーいかがあ!?」


いつもぎゃあぎゃあ騒がしい学校、銀魂高校も今日は一段と騒がしく(近所から苦情が出るのではというくらい騒がしい)自分のクラスのお店を宣伝していた。


そう所謂文化祭というやつだ。


ここ銀魂高校の文化祭は都内でも有名でなんでもイベントが楽しいんだとか。後は女子の中ではあのジャ◯ーズ系イケメン揃いで目の保養になるという噂が広まっている。実際噂ではないが。


わたしはそんな騒がしい学校内をひとり走っていた。


「ねえねえ君!ここどう!?楽しいよ!」


「ご、ごめんなさい。急いでるので。」


勧誘してくる人の間をすり抜けてすり抜けて目指すは構内の端っ子に存在する教室、3Z。両手に持った3つのジュースを落とさないようにしっかり持ちながら廊下を掛っていく。


わたしはここ銀魂高校3年Z組の苗字名前。お祭り事が大好きな私たちのクラスは文化祭で売上好成績を出したクラスは食堂1日食べ放題券を狙って売上を伸ばそうと必死に働いていた。


「お、お待たせ!」


ガラッと扉を開けて声を掛けると中から「遅い」と一言言われた。


「ご、ごめんね。人が多くって。」


「ったく、こっちは喉がカラカラで死にそうなんでィ。」


「それ人に物を頼んだ態度か?」


ごめんね、もう一声掛けてジュースを沖田くんと土方くんに渡した。彼らは私たちがしている「執事メイドカフェ」の執事の衣装のままだった。


「さんきゅ、名前。」


「いいよ、裏方だからこれぐらいはしないとね。」


「無理すんなよ。」


「うんっ!」


心配してくれた土方くんに精一杯の笑顔を返す。


「......あ、今何時かわかる?」


「今ですかィ?」


ポケットから携帯を取りだした沖田くんは「13時19分」と短く答えた。


「もう交代の時間過ぎてんじゃねーか。」


「ありゃりゃ、本当ですねィ。」


「え、そうなの?じゃあ知らせないと。」


「......ちょっくらいってきまさァ。」


よっこらせ、とわたしの肩を掴み立ち上がった沖田くん。沖田くんは立ち上がると同時にわたしの耳元でそっと呟いた。


ふたりっきり、だぜィ。


「へっ!?」


突然の言葉に体が硬直する。何か反論しようと沖田くんの方を向いたら彼はひらひらと背中を向けたまま手を振っていた。


沖田くんにはいつバレたのかわからないがわたしは土方くんに想いを寄せている。そのことを知っていて尚ふたりっきりにするのはかなりの意地悪だ。


心臓は止まるどころかバクバクと聞こえるんじゃないかってくらい大きな音を立てて身体中に血を送っていた。


「あー、腹減った。」


「お腹、空いた?」


「あぁ、もう昼過ぎてるしな。」


「確かにね。......じゃあ何か買ってくるよ。何がいい?」


「いや、飲み物もパシったのに食べ物まではいいって。」


「大丈夫だよ!わたしパシリだもん!」


「......そーいう問題じゃねーって。」


はあ、と溜め息をつく土方くんの様子が心配になった。もしかしてかなり疲れているのかな。


「なら、あんたらで買い出し行ってきてくだせェ。」


「「え?」」


ドアに寄りかかった沖田くんが言った。彼は面白そうにニヤニヤと笑っている。


「ついでに俺の分も頼みまさァ。」


「なんで俺らが行かなきゃ行けねーんだよ。」


バチバチとふたりの間に火花が散る。


「あ、あの、わたしは、別にひとりでも、」


「そうですかィ。じゃあ名前ひとりでお願いしまさァ。」


「......いや、だめだ。名前ひとりなら俺も行く。」


「え、」


「そーですかィ。あ、俺みたらし団子と焼きそばでいいや。」





と、いうことで。





「ねえねえあの人イケメンーっ。」


「でもでも隣女いるよ?彼女かな?」


「......んなまさかあ!」


「だよね!!」


「「......。」」


土方くんと買い出しをしているのだが彼がイケメン過ぎてさっきから女の子がちらちらと目をハートにしたり睨んだりと表情がコロコロと変わる。


「とりあえず、みたらし団子と焼きそばとたこ焼きは買ったね。土方くんは何が食べたい?」


「特にねーかな。食べれればそれで。」


「......マヨネーズは?」


「鞄の中にあっから平気。」


なるほど、さすが極度のマヨラーだ。予備のマヨネーズはいつも鞄の中なんだね。


「そっか。じゃあどこか適当にふらふらと、」


ドンッ


背中から一気に押された。


「きゃっ!」


わたしの体がスローモーションのように倒れていった。


「名前!」


ぎゅっと土方くんがわたしの体を片腕で支えてくれた。ほっとした顔で私たちは顔を見合わせた。


「あ、ありが」


次の瞬間、


ドンッ


「「え?」」


ぐらっと倒れるわたしと土方くんの体。どうやら土方くんもバランスが悪いときに誰かから押されたみたいだ。


ドターンッ


そんな冷静に物事を考えていたわたしは思考を働かせようと目を開けた。


ちゅっ


ふいに感じる唇に暖かい感じ。これは食べ物の暖かさなんかじゃない、人独特の体温。それが離れる感じがした。そして目の前に広がるのは、


「......わ、悪ィ。」


土方くんの困った顔だった。


周りからは冷やかす声と女性独特の叫び声が聞こえる。


「......う、うそ。」


自分でもわかるぐらい真っ赤になった顔。目の前にいる土方くんも更に真っ赤だから余計今の状況が恥ずかしくてまた更に真っ赤になった。


これが今の彼氏のファーストキスだったなんて、死んでも言えない。







ハプニングだって大切







「......ああぁあぁ。」

「どうした名前?」

「いや、文化祭日和だなって考えてたら昔の出来事思い出した。」

「......あ、あぁ。あれか。あれはな、うん。」

「あ、知ってやすかィ?あの時土方さん押したの俺ですぜィ。」

「「え!!?」」




>>> あとがき



紅音ちゃんお待たせ致しました!土方と文化祭デート!
本当はずるずるとデート話を書きたかったけど纏まらない気がして(泣)
それに文化祭といえばハプニングということでこんな結果に。
気に入ってくれたら嬉しいな(○´∀`○)ノ
紅音ちゃん、リクエストありがとう!


 
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