012
( 2 / 8 )

 


私が父さんの養子になれた日、(ご時世、役所もなにもないので口先だけだが)父さんが営んでいる塾というものに連れていかれた。


連れていかれる前、私が持っていた刀は捨てるよう言われ仕方なく捨てていった。いや、仕方なくじゃない。正確には捨てたかった。あんな誰が使ったのかもわからない剣など。


璢「(ここがこの人の居場所…。)」


ぼけェと前を歩いている父さんの背中を見つめる。


璢「(今日からこの人が私の父さん…か。)」


「そういえば、まだ自己紹介していませんでしたね。」


くるりと父さんが私の方を向く。急に振り向く父さんにビクリと肩を震わす私。


「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。私は何もしません。私はただあなたに武士道を教えたいだけですよ。」


璢「ぶ、武、士道?」


「えぇ。今日からあなたに武士道を教える松陽と申します。」


あなたは?と笑顔で私を見る父さん。


璢「み、美菅、原、璢。」


松「そう、璢ですか。よろしく。」


父さんが握手を求めるように私の前で屈んで右手を出した。


璢「う、うん。」


私は何故だか知らないがこの人は大丈夫だ、と思い右手を握った。


松「さあ。行きましょう。璢も今日からこの塾の生徒になるのですよ。」


璢「……。あなたの娘じゃないの?」


父さん、とはまだ呼びづらかったのであなたとしか言えなかった。


松「娘でもあり、塾生でもある。どちらにしても大切なことには変わりはありません。」


そう笑顔でいい、私の手を握り中へ入っていった。


 
[ ] [ もどる ] [ ]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -