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ドンッ


私は背中を木に押し当てられた。


璢「晋に」


その言葉の先は言えなかった。晋兄の唇によって塞がれたから。


璢「しっ………んぅ。」


名前を呼ぼうとしても再びキスの嵐が降ってくる。


さ、酸素が足りない…。


ドンドンと晋兄の胸を叩く。晋兄は唇を離してくれた。


璢「ハァ、ハァ。ど、どうして、急、に。」


晋「お前はとうとう幕府の犬までになりやがったか?」


璢「違う!私は違う!!幕府の犬になった覚えはない!!」


晋「へェ?」


璢「ただの、アルバイトよ。」


晋「璢をアルバイトになァ。」


ニヤニヤしながら私の頬を撫でてくる。私は晋兄のこの癖が好きだった。


璢「なにしにここに来たの?」


ギロリと私は晋兄を睨む。しかし頬を撫でる行為にはツッコまなかった。


久しぶりだったから。


晋「冷てェな。いつの間にお前はそうなった?」


璢「こっちの台詞よ。どうしてそんな目をしてるの?昔の晋兄はもっと優しい目をしていたよ。」


そっと私は晋兄の頬を触る。


晋兄は少し驚いた様子で私を見た。悲しく哀れな目で。


晋「そういやァ、何しに来たっつってたな。」


こくん、と頷く。


晋「祭りを見物しにここに来た。」


あ、そういえば晋兄は祭りが好きだったな。ハデなのが好きとか昔言ってた。


晋「それと」


璢「!!」


くいっと私は顎を掴まれた。


晋「お前を引き戻しに来た。」


璢「!?」


私を、引き戻し…?


晋「鬼兵隊に戻って来い。副総監さんよォ。」


ニヒル顔で私を見つめる。


璢「む、昔の話じゃんそれ。私はもう戻んな、んぅ。」


再び私達の唇が重なる。


ってかコイツどんだけキスすんの!?いつの間にキス魔になりやがった!?


さ、酸素が足りない!!


璢「んぅ―――――!!」


ドンドンと晋兄の胸を叩きまくる。


ぷはぁ


ようやく唇が離れた。


晋「ククク。随分と離れてからキス、下手になったなァ?」


璢「なッ!!/////」


晋「まあ、いずれお前は俺の所に来るぜ。」


璢「何を根拠に……!!」


フラッ


やばい、視界が霞んで…。まさかさっきのキスでなにか飲まされた!?


晋「また迎えに来る、俺の璢ちゃんよォ。」


晋兄は私の額にキスをし立ち去ろうと歩いた。


璢「待、て。」


置いてかないで。私をまたひとりにしないでよ。


晋「じゃあ、行ってくる。」


璢「……いってらっしゃい。待ってる、ね。」



もう待てない、ひとりは嫌だよォ晋兄ィ。


私の意識はそこで途切れた。
 
 
 
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