016
( 2 / 4 ) 私が父さん(松陽先生)の養子となり早数年が過ぎ、やっとここにも慣れた頃。
夜風が涼しくなった季節。私は縁側である人を待っていた。
ドタドタと足音が聞こえてきた。
晋「おい。」
璢「あ、晋兄!」
私はそれぞれ親しみを込めて『兄』を名前の後につけて呼んでいた。そして、
晋「行くぞ。」
璢「うん!」
晋兄は数年前警戒して私に近づかなかったのが嘘のようだ。しかも必ず週に一度、寝る前にあるところに連れていってくれるようになった。
晋兄は私に手を差し延べる。つい嬉しくなり微笑みながら手をとる。
晋「なにニヤニヤしてんだ。」
璢「だって晋兄、前とは違う態度だから。なんかすごく嬉しくて…。」
そう言うとポカリッと殴られる。
璢「いてっ。」
晋「うるせェんだよ。」
ちらりと晋兄を見る。
ここ数年で銀兄、小太兄、晋兄は急激に成長した。
昔みたいにひょろくなく、体つきがガッシリしてきて声も低くなった。そして背も大分伸びた。
もう父さんと並ぶくらいじゃないかな?
私達は相変わらず剣を握っている。多分手放すつもりはない、いや手放せないだろう。
日々の稽古のおかげか私達は塾の中の四天王らしき位まで上がっていった。
とりあえずここ数年色々ありすぎて、濃いかった。
こんな幸せがいつまでも続けばいい。そう思いたいが私も歳を重ねるごとに、戦を避けるのは無理だろうということがわかった。
私達も、いつか戦にでてしまう。その前に少しでも多くの幸せを。そうしたら、生きたいと心から思えるから。
晋「着いた。」 [ ← ] [ もどる ] [ → ] |
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