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「おはよーっ。」

「おはよう。ねえ昨日のあのテレビ見た?」

「見た見たドッキリワイドショーでしょ?すごかったよね!」

「特にさあの人面白かったよね。」



朝から可愛らしい会話があちこちで飛び交っている。そんな中わたしは耳にイヤホンを入れていた。音楽に集中するため更に音量を上げる。


学校に近づくにつれ生徒の姿が徐々に多くなっていた。わたしもその中の一人としてぼーっとしながら学校目指して歩いていた。


ふと校門に目をやるとなにやら腕に黄色い腕章をつけた生徒や先生が指導をしている。所謂生徒指導というやつだろうか。


厄介なことになってしまった。


とにかく気づかれないようにさりげなくそこを通りすぎようとした時だった。



ガシッ



腕を掴まれた。



「おはようございまさァ、姫路野。」

「あ、はは。おはようございます。あーと、」



名前が思い出せない。昨日みんなに自己紹介をしてもらったが生憎わたしは記憶力が長けていなくこうして思い出せない人もいる。



「ひどいでさァ、昨日紹介したのにねィ。」

「ご、ごめん。名前覚えるの苦手で。」

「仕方ねェ、沖田総悟でさァ。」

「あ、そうそう。そんな感じの名前!これからよろしくね。......それじゃ教室行くんで。」



ちらっと腕を見るが離してくれる気配はなさそう。それどころかニヤニヤと嘲笑っている。なんてドSなんだ。



「今日は新学期最初の生徒指導でさァ。」

「そ、そうみたいだね。」

「風紀委員の俺から逃れようなんざ1000000年早いでさァ。」

「え、なにその0の多さ。もうはなっから無理だから諦めろと言われてるようにしか聞こえないんだけど。」

「あれ?そうやって言ったつもりなんですがねィ。」



とりあえず、グッと腕を引っ張られ結局わたしは生徒指導をうまく抜けることができなかった。畜生。



「土方さーん、捕まえやした。」

「おぉ、......って姫路野じゃねーか。」

「生徒指導抜けるなんざ考える馬鹿はコイツぐらいしかいねーでさァ。」

「ぐぬぬっ。」



否定したいがどれも事実なのでなにも言い返せない。非常に悔しい。


しばらくわたしはジロジロと観察される。ちょ、沖田スカートの中見ようとすんなアホ。お気に入りのパンツだから余計見るな。


紙になにか書いた後、土方はわたしに言った。



「......スカートとかはまあなんとかギリギリ大丈夫だが、お前髪染めてるだろ。」



ギクリと肩が上がる。


今のわたしは然程派手ではないが茶色に染めている。何故ってわたしのパピーが面白半分(校則違反を知った上で)染めたのだ。マミーは横で大爆笑していた。


それがいくら黒に染めても黒くならず、後で問い出したら会社で流行ってる外国製の超強力の奴らしく「自分自身で試すのは少し怖い。誰かにやらそう。」というわけでわたしは見事に実験体にされたのだ。まあ勿論ボコりましたが。(半殺で許してあげたわたしを褒めて。)


それからずっと髪を染めるだろ、と教師や生徒に問い詰められるようになったのだ。好きで染めてないのに!


と、これを一から説明するのも面倒臭いのでとりあえず簡潔に述べる。



「染めてるけどさ、とれないんだよ。」

「んなわけあるか。」

「んなわけあるから。ここに実在してるから。」

「なら試させろ。」

「嫌だよー。これ以上したら髪痛むもん。」

「へェ、じゃあ尚更やりやしょう。」

「あんたわたしが嫌なことしたいだけだろ。」

「あんたじゃねェ、沖田総悟。」

「もう覚えたわ!」



とやかく3人でぎゃあぎゃあ騒いでいると学校の建物から怠そうな声が掛かった。



「おいおい初日から生徒指導かァ?いつからそんなヤンチャになったんだ君は。」

「あんた誰だよ。」



変な喋り方をしながら近づいてきたのは3Zの担任兼わたしのいとこの坂田銀八。



「銀ちゃん、助けてよ。」

「銀八、こいつ髪染めてる。」

「土方が死んでくれやせん。」

「3人一辺に言い寄られるたァ、俺もしかしてモテ期?」

「「「......。」」」

「嘘です野郎にモテても嬉しくないです。だからそんな痛い目で俺を見るなァァ!!」



その後、わたしの悲しい事情を知る銀ちゃんがわたしの髪の経緯を2人に説明し頭髪検査は免れた。


その日は2人が朝とは違い妙に優しかったのを覚えている。







頭髪検査バトル



「大丈夫、お前その髪色似合ってっぞ。」

「人生長いこと生きてれば色々ありまさァ。」

「......同情するなら金をくれェェェ!!!」



 
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