( 1/1 )
「......ここかー。」
そう呟く声も桜の花びらと共にひらひら舞っていく。視界も一面ピンク色になる。
その花びらを掴もうと手を伸ばしたが見事に指の間を抜けていく。簡単に掴めない、それも美しさの一種か。
手を見つめていた顔を再び上げる。入り口には「銀魂高等学校」と書かれていた。
「元気にしてるかな。」
気分は上機嫌で軽い足取りで桜並木道を歩く。
ここをこうして歩いていると小さいときを思い出す。小さい頃もよくこうして両親と桜並木道を歩いていた。
だからわたしは桜は好きだ。それともうひとつ理由もある。
誰かから聞いた、桜は人に出会いと別れを教えてくれると。そんなのどこでも経験できるじゃないか、そうやって生意気言った気がする。だけどそいつは少し苦笑いをして言った。
「もう少ししたらお前もわかるだろ。」
そんな日、いつ来るのだろうか本当に。
ズンズン足を進めて靴から学校指定のスリッパに履き替える。
そのままペタペタ間抜けな音を出しながら歩いた先には「職員室」と書かれた文字。
わたしは迷いなく開けた。
「すみませーん、坂田先生はいますか?」
「おーう、こっちだァ。」
相変わらずの怠そうな雰囲気を出す坂田先生もとい銀ちゃんに近づく。
「校門まで迎えに来てくれてもよかったじゃん。」
「んな暇があったら糖分摂取するわ。」
ちゅーっと甘ったるい匂いを出しながらいちごみるくを飲む。正直紙パックと銀ちゃん似合っていない。
「......で、元気にしてたか?」
「まあね、この通りピンピンです。」
「だな。あっちは楽しかったか?」
「楽しかったけど、こっちの方が楽しそう。」
それに、と付け加える。
「桜、日本にしかないから。」
「......そっか。」
わたしの頭に手を置き「行くぞ」と一声掛け立ち上がった。そして歩き出す白く大きな背中を追いかけた。
「ところでわたしのこと、クラスの人知ってるの?」
「あぁ、一応耳には入れさせた。覚えてるか知らねーがな。」
あいつら馬鹿だからなァ、と呟く銀ちゃんはどこか楽しそうに見えた。どうやら学校生活充実しているらしい。
小汚ない教室の前で止まる。どうやらここが教室らしい。
「じゃ、呼んだら入ってこいよ。」
「えー、そんなベタなことするの?」
「当たり前だろ転校生の掟だ。」
「変な掟作らないでくださーい。」
うるさいとでも言うように手をしっしっと振り教室に入っていく。
わたしは未だ着慣れていないセーラー服を触る。なんだか女子高生って感じ。
と、その時。
ガシャァァァァン
「!!!?」
突然目の前で窓ガラスが割れる。幸いにも離れていたせいか怪我はなかったが。
んなことよりも驚いているのがそこに散らばっている窓ガラスの破片と学ランを着たゴリラ。
なんでこんなところにゴリラが...?
口をぱくぱくさせ驚いていた時だった。
「近藤さーん、大丈夫ですかィ?」
割れた窓から顔を覗かせるひとりの少年。密色の髪に女負けの顔。まさに王子という感じだ。
そんな人と目がばっちり合う。
「......誰ですかィ?」
「え、あ......転校生です。」
「ふーん。」
男の子は興味なさそうな返事をする。興味ないなら聞かなければいいのに。
男の子の態度にカチンときたがまあそこまでわたしは子供ではない。
とりあえずこのゴリラは生きているのだろうか。そう男の子に尋ねようとした。
「なにボーッと突っ立ってるんでィ。」
「え。」
ちょいちょい、と手招きをされる。
「早く入りなせェ。」
「え、でも、これは?」
「大丈夫、どうせ復活すらァ。」
だから早く、そう急かされ銀ちゃんの転校生の掟とやらを無視して教室に入った。
「あ、凛華入っちゃだめだろー。」
「いや、だって、手招きされたから。」
「手招き?」
「......なんでもない。」
「まあ、いいや。とりあえず自己紹介して。」
めんどくさそうに頭をボリボリ掻きながらみんなの注目をわたしにバトンタッチ。
「はじめまして、姫路野凛華です。つい先日までドイツにいました。いわゆる帰国子女というやつです。これから1年間お世話になります。」
「おいおい、銀さんとの関係は?」
その言い方、誤解されるよ。ほらみんな目が点になってるし。
「......銀ちゃんとはいとこにあたります。それ以外なんの関係もありません。」
「「「「......えええぇえぇぇぇ!!!?」」」」
まずは自己紹介
「銀ちゃんにいとこなんていたアルカ!?」
「疑問がおかしいぞ神楽。」
「でも銀さんのいとこであり帰国子女なんて!」
「(...なんか理由があるのかねィ。)」
もどる
|
|