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「ぎゃああああああっ!」

「は!?な、なにごと!?」



ガタガタと物を震わせ立ち上がる銀ちゃん。手に持っていた雑誌やコップを荒々しくテーブルに置いて2階を掛け上がる。


そして目の前に立ちはだかる扉を勢いよく開けた。



「どうした凛華!?」

「おま、おばばばっ!」



そこにはわなわなと肩を震わせながら椅子に座っている凛華がいた。どうやら慌てているらしい。



「え!?もしかして透けてるやつ関係!?ちょ、俺トイレ、いや、ファブリーズとか効くかな!?待ったあれは匂いのやつだ!」

「だあああああ!」



次の瞬間、



「喧しいんじゃァァァァ!!!」



ドカァァァァン



「ぎゃああああああ!!?」



本という本の塊が俺の方へとやってきた。















「宿題が終わんねー?」

「......はい。」



頭に大きなたんこぶを作ってついでに額に青筋立てて椅子に座る銀ちゃんとその下で正座して下を向くわたし。


わたしは只今銀ちゃんのところに居候中。これがまたこいつは見た目とは裏腹にお金持ちの坊っちゃんで独り暮らしのために一軒家を貰っている。


銀ちゃんのとこの叔母さんが言うには家族ができたときのためにとかいってあげたらしいが銀ちゃんにとってはそれは大きなお世話らしい。


とにかくわたしの家族がまだ海外のため住む場所を探していたところここを発見したのだ。勿論学校では既に許可を貰っている。少しだけ脅したら、はっ、チョロいもんだ。


とにかく2階にある一部屋をわたしの部屋として居候させてもらっている。休みの日はだらだらと過ごすのがわたしの一時の幸せ、だった。



「んなことでぎゃあぎゃあ騒いでたのか。てっきりG(ゴースト)が出たのかと。」

「あ、あぁ。G(ゴキブリ)が出たその時は固まって動けなくなってるから。」

「は?んなことになってたら食われっぞ。」

「食われる?Gって肉食なの?」

「あいつは絶対肉食だぜ。むしゃむしゃと魂食うぞ。」

「え!?Gって魂食うの!?」

「は?食うに決まってんだろ?」

「き、決まってるんだ...。」



そんな常識知らなかったな。じゃあ知らない間に魂食べられないように気を付けよ。



「んなことよりそんな叫ぶほど宿題あんのか?」

「ありすぎて!それはそれはありすぎて困ってる!」

「.......溜めてた凛華が悪ィだろ。」

「溜めてたんじゃない!後回しにしてたの!」

「結果溜まってんじゃねーか。」

「け、結果的にはね。」



だらだらと冷や汗を足らしながら聞く。やばいやばい怒ってる。これは確実に怒ってる。



「宿題如きで騒ぐったァ小学生以下か。」

「は、はい、すんません。」

「しかも喧しいとか言いながら俺に物投げてきたな。」

「す、すんません。イライラしてたモンで、つい...。」

「だからって物に当たんな。」

「はい、仰る通りです。」

「ったく...。」



くるっと椅子を回し机に向かう。そこにはプリント類がぐちゃぐちゃと置いてあった。見るからに汚い、女要素が全くないほど汚い。しかもプリントを詳しく見てみると間違いだらけ。



「...お前ってこんなに馬鹿だったっけ?」

「馬鹿じゃないもん。」

「いや、こりゃあどう見たって馬鹿だろ。」

「...英語ならできるのにな。」

「現代文できねーって、お前元は日本人だろ?しかもこれ俺の教科だし。」

「.......日本語は嫌い。古文なんか一々口説いし。」

「担当教科のやつの前で言うことかそれ?」



ぶすーっと頬を膨らまして横を向く。嫌いなものは嫌いだけど好きになろうと努力はしている。だけど苦手なものは苦手なまま。



「お前よォ、一応今年受験だぞ。大丈夫なのかよ?」

「就職する。」

「叔父さん叔母さんからは進学させるように言われてる。」

「ぐっ。」

「進学の機会があんだ。有り難甘えとけ。」

「でも、どこ行こうとかわかんないし。こっち来たばっかだし。」

「そのために担任がいんだろ?」



親指で自分を指し、ニヤリと笑う銀ちゃん。



「何かあったら相談しろ。いとこでも担任でもある俺にな。」



スッと彼は椅子から立ち上がりわたしの頭を一撫でして「頑張れよ」と一言付け加えて部屋を出ていった。


なんだか、心が、こそばゆかった。







宿題の山



「お、おはよー。」

「おはよ......、凛華その隈どうしたヨ?」

「しゅ、宿題、頑張った。」

「宿題?あ、あの地獄のように溜まった宿題アルカ。」

「う、うん。」

「おう席つけー。凛華宿題やったか?」

「死ぬ気で、やった!」

「......おー、お疲れ。その調子で頑張れ。」

「はーいっ!」



 
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