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昼間は人がいる気配を感じれないほど静かなこの街。勿論今日もしん、と静まり返っておりなんだか不気味な気配しか感じられない。
しかしこれは偽りの姿。本当はこんなのではない。
この街は夜、活発的に動くようになっている。
辺りはネオンの光で輝いており派手なお兄さんやお姉さんが厭らしい服を着てお店に勧誘している。昼間とは大違いだ。
その街の中にあるひとつの大きな店。その大きな店には「Silver Host」とキラキラ輝くこれまた大きな看板が飾ってある。
俺はその店に迷いなく入っていく。
「あ、沖田さんこんばんは。」
お店に入ったらまず始めに挨拶してくるここの店の雑用、山崎退。主にドンペリを運んだりドンペリを運んだり。あちこち店の中を影薄く動き回っている。
「...ちょ、俺の紹介文ひどくないですか?」
「その通りだろィ。」
「い、言い返せない。」
「じゃあ、自分でも認めてんだろィ。」
渋い顔をしたまま山崎は仕事へ入っていった。俺も歩き出していく。
きゃあきゃあと騒いでいる客の横を気づかれないように通り過ぎ奥の部屋へと入っていく。その時にやつと出くわした。
「総悟じゃねーか。」
「げ、土方コノヤロー。」
こいつは土方コノヤロー、通称マヨ方。とにかくうざい死ねばいいと思う。つかいつ死んでくれんだ?やっぱり俺が手を汚さなきゃいけないのかねィ。
「おいィィィィィ!!マヨ方じゃねェ土方十四郎だァァァ!!」
「あー、はいはい。マヨ方。」
「てめ、マヨ馬鹿にすんなよ!!マヨは最強なんだからな!!」
「うわ出やがった、マヨ宗教の長のマヨ方。」
「だからマヨ方じゃねェェェ!!」
俺たちが毎度のことながらぎゃあぎゃあ休憩室前で騒いでいると、その扉から怠そうに声がかかってきた。
「うるせーな、こっちは全然寝てねーんだぞコノヤロー。」
「あ、旦那じゃねーですかィ。」
彼は坂田銀時。一応ここの店長。なので勿論今も仕事のはずだか何故かわからないがソファに寝転がっている。
「てめー何寝てんだ!?仕事中だぞ!!!」
「あー?だって今んとこ指名ないし。」
「旦那ァ、そういう時に限って来るんでィ。」
「......嫌なこと言うなよー。まじっぽそうじゃん。」
その時あの雑用係りザキが小走りでこちらへ向かってきた。噂すればってやつかねィ。
「坂田の旦那ァ、ご指名入りましたよ。」
「ほら言わんこっちゃねェ!」
頭を抱え騒ぎ出した旦那は文句を垂れながら渋々ソファに掛けてあった白いジャケットを着る。そして肩を落としながら表へと続く方向へと歩いていった。
「あ、ちなみに副長と沖田さんも指名入ってますよ。」
「......ったく、仕方ねーな。」
「とかいって格好つけて本当は鼻の下伸ばしたくて仕方ねーんでしょう?」
「誰が鼻の下伸ばすかァァァァァ!!!」
「今なら伸ばして大丈夫ですぜ。写メ撮って皆にばら蒔いてやらァ。」
「総悟ォォォォ!!!」
「副長沖田さん!!!騒いでいる暇があったら早く行ってください!!!沖田さんは早く着替えて!!!」
「へーい。」
「つかお前そろそろ普通に遅刻すんの止めろよ。」
「仕方ねーんでィ、俺の脳味噌が寝たりないって囁くから。」
「お前の脳味噌気持ち悪ィな。」
死ね土方、そう台詞を投げつけて俺はロッカールームへと向かっていった。途中後ろから罵声が聞こえたが全て聞こえないふり。あいつに貸す耳はありやせん。
ロッカールームの扉を開け、自分のロッカーを乱暴に開ける。開ければそこは妖精がいる森なんてものではない。不快の森だ。
あー、これいつの焼きそばパンだっけなー。
そんなこと思いながら荷物を詰めて俺専用の服を取り出す。ジャケットに腕を通し、薔薇を胸ポケットに入れ準備完了。
鏡で最終確認なんてしない、面倒だから。
そして再びさっきのルートに戻り、ザキに指名相手の確認をする。確認後迷わずその女の隣に図々しく座った。
「......ようこそいらっしゃいやした、お嬢さん。」
今日も途切れずここ、Silver Hostに来る女共。よくも飽きずにのうのうと来るもんだ。
まあ、仕方ねーから楽しませてやるか。少しだけ、な。
頭の悪いお前らに告ぐ
「やっぱりわたしダメ女なのかなー。」
「そんなことねーでさァ、あんたは世界一綺麗だ。」
「......もお!そんなこと言われたらドンペリもう一本追加ァァ!!!あ、勿論総悟くんの昇格のためだからね!」
「......毎度ありがとーございやす。」
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