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カリカリと何かを書く音、ページを捲る音が何層も重なりわたしの耳へと入ってくる。静かで心か落ち着くこの感じが好きだ。


だから学校がない休日はこうして図書館に来ている。夏は涼しいし冬は暖かい。こんな快適な場所はないだろう。


今日、土曜日も学校がないので大好きな図書館へ向かう。ちょうど宿題もしなければならない。


ウィーン


自動ドアが開き、暖かい空気がわたしを包み込む。眠たくなる暖かさだが頑張って寝ないようにする。


真っ直ぐ歩き団体用の机に座る。宿題を広げてさあ、やろう!とやる気を出したときだった。


ウィーン


再び自動ドアが開く。誰かが来たのだろう、ただそう思っていた。気にせずシャーペンを取りだし取り掛かろうとした。


「ここ、空いてやすか?」


「え?」


突然話し掛けられた。びっくりして顔を上げると、


「あ、沖田くん。」


「なんだ凛華じゃねーか。」


そこにいたのはわたしと同じクラスの通称サディスティック星の皇子、沖田総悟くんだ。彼とはあまり接点がない。こうして話し掛けられるのも驚きだ。


「じゃあ、遠慮なく隣に。」


そう言いわたしの隣の椅子を引き、座った。意外に距離が近い。肩も当たりそうだ。


「凛華は何してんでィ。」


「......宿題?」


「宿題?してんのかィ。」


「う、うん?」


「......なんで全部疑問系?」


「いや、癖っていうかなんていうか。」


持っていたシャーペンをくるくる回し考える。すると沖田くんは「まあ、いいや。」と言い、鞄から教材を出す。


「宿題、沖田くんでもやるんだ。」


「沖田くんでも、は余計でィ。」


「だっていつも誰かに写させてもらってるじゃん。」


「......たまには自分でやらねーとねィ。」


「ふーん。意外に真面目。」


「俺はいつでも真面目でィ。」


「え、」


「なんでィ、その物欲しそうな顔。」


「いや、してないから大丈夫。」


目の先に入った宿題というプリント。そろそろ始めようか。


なんの合図もなしにわたしはそれに取りかかる。カリカリとプリントに答えを書いていき、たまに教材を捲って答え探し回して。


その時、左側から腕が伸びてきた。


「ここ、違う。」


「え。」


細い指が差す場所をもう一度確認する。しかしどこが間違っているのかわからない。


「ここはxにk+√5を代入させてやればいんだろィ?」


「えー、でもどうして?どこにも代入なんて書いてないよー。」


「代入するって答えを書くわけねーだろィ。ここの文章よく読めば書いてあるじゃねーか。」


「......ほ、本当だ。」


「あーあー、ここで凡ミスしたら5点消えるー。」


「い、今ので5点取り返したもん。」


「じゃあ次の問題解けたら5点取り返したこと認めてやらァ。」


「おっし!頑張る!」


またカリカリとプリントに問題式を解いていく。途中視線が気になり横を向くと沖田くんがじっと見ていることに気がついた。


「沖田くん、やらないの?」


「......もうやった。」


「え、早くない?来てからまだそんなに時間経ってないよ?」


「俺を誰だと思ってんでィ。」


いいからやれ、と無理矢理向き合わされた途中式の書かれたプリント。疑問が残りながらも渋々やり始めた。


「......で、できた。」


プリントを渡し回答してもらう。なんだか沖田くん先生みたい。


「おっ、正解。」


「やった!どうどう?5点ゲットー!」


「おーおー、よく頑張ったねィ。」


そう言って頭を撫でてくれた沖田くん。急なことでびっくりして、いや、恥ずかしくなって下を俯いてしまった。


「たまにはいーだろィ?ふたりで勉強なんて。」


「え、」


「お前いっつもここでひとり勉強してたよねィ?」


「な、なんで、わたしがここでひとり勉強してるって、知ってるの?」


「......見かけることが多々あったから。」


そう言って顔を机に伏せた。耳まで真っ赤なのはなぜだろうか?心配になり顔を覗くと、赤い瞳と目が合う。


「今度は、」


細くしっかりした腕がわたしのシャーペンを奪い、プリントの端にさらさらと書く。明らか数学とは関係のないローマ字ばかり並べられる。


そして、書き終わりシャーペンでわたしを指す。


「俺も誘え。」


なんとも図々しい言い方だった。







ひとりよりふたり







「これ、沖田くんのメアド?」

「......一応。」

「ここに来るとき以外、いつ使えばいいの?」

「......毎日。」

「ふーん、毎日......って毎日!?」




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