「晋助は甘いもの好き?」


「......んーん。」


「じゃあ苦いチョコ好き?」


「......んー。」


「わかったァ。今年も飛びっきりいいの作るね!」


学校の帰り道、俺が適当な返事をしているのにも関わらず何を感じとったのかニコニコしている幼馴染みの姫路野凛華。


こいつとは生まれた時から一緒で小中学校、そして現在の高等学校までも同じである。だから周りから見れば仲良しの類いに入る。


ずっと一緒にいるからこそわかる相手の得意不得意。俺は毎年この時期になるとまじで吐き気がするぐらい嫌だ。


ひとつは俺は甘いものが嫌いだ。そのくせ女子というやつは甘ったるいチョコを持ってきて下駄箱やら机やらに入れてくる。まあ、毎年凛華に全部あげてるが。


もうひとつは凛華にある。こいつは本当に超がつくほどのド天然であり不器用。だから料理の方も勿論不器用だ。


この前なんか魚を4つに切るだけなのに包丁を振り上げて切っていた。しかも手が滑って包丁が宙を舞い俺の足元に着地した。この時はさすがに殺されると思った。


凛華のチョコは毎年見た目はグロテスクだが味はまあまあだ。しかし今回は訳が違う。


なんとあの志村妙(という名のダークマター製造機)と一緒に作るとか言いやがった。一瞬ふざけんなと叫びたかったがそんな怒る気力もねーよ。


「でね!妙ちゃんが色々考えてきてくれててね!」


「......あぁ。」


「今年はなんとフルーツチョコにするらしいの!」


「簡単だな。」


「でも色とりどりで美味しそうでしょ?」


志村妙が手を加えなかったらな。


その言葉を飲み込んだ。あぁ、まずいな。


「そーいえばさ、」


先を歩いている凛華はくるっと俺を振り返った。その姿が幼い頃を自然と思い出させてくれる。


「今年のは、覚悟しててね。」


「......ダークマターか?」


「ああ!!やっぱりそんなこと思ってたんだ!!」


つい出てしまった言葉に「まあ否定はしないけどね」と否定を表さない言葉を返す凛華。知っててやってたのかこいつ。


「そっちの覚悟じゃなくて、違う方の覚悟!」


「......味か?」


「違う!!」


わかってる、わかっているけど彼女の口から言わせたい俺は少しずつ解かしていく。


「じゃあ見た目か?」


「見た目はいつものこと!」


「チョコが甘ェ話か?」


「ああああ!!もう違うの!!だから、」


「じゃあ今年のチョコは本命とか?」


「違...っ!!!...くはない、かな。」


顔を真っ赤にさせて下をうつむく。その姿が面白くて思わず笑ってしまう。


「毎年本命じゃねーのかよ。」


「そ、そのつもりなんだけど、今年はひと味違う、というか、なんというか......。」


「ふーん、どんな風に違ェんだ?」


下を向く凛華の顎をくいっと持ち上げる。ゆでダコより真っ赤な凛華は俺と目線を合わせようとせず更に真っ赤になるだけだった。


「そ、それは、」


「......ククッ。」


「その、」


「......早く言えよ、俺が気ィ短ェの知ってんだろ?」


「知ってるよ。だから喧嘩しちゃうんだよね。」


「うっせェ。」


「......そ、そんな晋助を、毎日、見てたから。」


「ふーん。で?」


既にオーバーヒート寸前かというぐらい真っ赤真っ赤にして話す。その反応が面白くて腰を掴み引き寄せてやった。そしたら今度は涙目にまでなりやがった。


「見てたら、いつの間にか、幼馴染み......とは違う気持ちが出始めてて、それで、気づいて、だから、」


今年は、そう言いかけた口を俺は瞬時に塞いだ。


凛華は目をまん丸くさせた。必死に息を吸おうと呼吸するが俺がそれを許さない。


「んっ、ふぁ......し、」


噛みつくようなキスを繰り返す。崩れそうになる凛華を腰で支える。


「ん、んんーっ。」


こんなもんじゃ今まで我慢してきた俺の気持ちには到達しない。我慢してきた俺の苦しみを味わえ。


俺たちはそこが路上であることを忘れお互いがお互い息が止まるくらい深く求めあった。


これがバレンタイン数日前の話だ。







息も止まるくらいに







「ハッピーバレンタイン晋助!」

「......なんだチョコかよ。」

「え、嫌だった?」

「いや、去年と今年は違ェっつったからお前自身くれるのかと思った。」

「こんのエロ杉!!」

「でも数日前の凛華は気持ちよさそうだったけどなァ?」

「ば、ばかぁぁぁぁぁ!!!」




ーーーーーあとがきーーーーー

なんか一番gdgdになってしまった気がする。
高杉久しぶりだからわかんないよー。


 
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