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「まだ痺れるか?」
「......んーん。もう大丈夫。」
手を握ったり開いたりして動きを確かめる。先程とは違い体の動きも大分楽になった。
「そっか。」
「うん。」
腰を上げてゴミがついた箇所を手で払う。そしてちらりと上の目線にいる銀ちゃんを見た。
「ん?なに?」
「い、いや。何もない。」
ついついいってしまう目線。それは銀ちゃんの唇を捉え、わたしの唇に熱を持たす。つい先程わたしの唇とあの唇が重なり......。
「うあああああっ!」
「......やっぱお前無理してんじゃねーの?」
「だだだだだ大丈夫!この通り元気だぞハハハッ!」
「ふーん。」
「それに、腹蹴られた仕返ししないとね。」
ニヤリ、そう笑うと銀ちゃんも同じ笑みを返してきた。
「そんじゃ、いっちょ暴れるか。」
「うん!」
重たい扉を開けひとり寂しかった暗い部屋に別れを告げ、ふたりで出ていった。不思議と体が軽かった。
「総理。」
パーティーで関係者に挨拶をしに回っている時、総理にあの使用人が話しかけた。総理はニコニコしながら人の間をすり抜け外に出る。
そして周りを気にしながら小声で話した。
「何かあったのかね?」
「大変申し訳ございません。男の方を取り逃がしてしまいました。」
「......あの銀髪か。」
「はい。」
「まあ、雑魚が一匹動いたところであの部屋には辿り着けないだろう。」
「と、申しますと?」
「あの女は私とお前しか知らない秘密の部屋に閉じ込めている。それが漏れるようなことはないだろう。」
「左様でございます。」
「銀髪は引き続き探せ。」
「はっ。」
「見つけ次第捕らえろ。奴はじっくりゆっくり炙ってやる。」
「畏まりました。女の方は?」
「今は放っておけ。後に働いてもらうからな。」
「......承知致しました。」
「では、私はこっちに戻る。引き続き頼む。」
「はっ。」
総理はふっと鼻で笑いパーティーへと戻った。使用人は無表情のままその場を後にした。
「......。」
使用人が立ち去った後、柱にひとつの影。
ザザッ
「こちら、土方柳江。対象の人物を発見しました。」
警察署警部補佐の妹である土方柳江。彼女は他の警察とは違う任務を遂行していた。今回警察は万が一のためとしてパーティー内外を警備している。土方柳江はそれに紛れてある捜査をしていた。
「総理を、尾行?」
「あぁ。柳江ちゃんにしかできないんだ。」
そう近藤警部は言った。
「どういうことですか?何故わたしが?」
「実はな、ここ最近銀の猫の噂が流れはじめてな。」
「銀の猫のですか?」
「あぁ。噂に過ぎないんだがどうも怪しくてな。」
「......その噂とは?」
「銀の猫の活動理由だ。」
「活動、理由?」
「どうやらただ怪盗を楽しんでいるわけではなさそうだ。彼らはある真実を追い求め怪盗をしている。」
「......それでも噂でしょう?」
「実はな、10年前のあの事件であるふたりの子供が行方不明になっているのを思い出したんだ。」
「10年前、というとあの未だに犯人が捕まっていない死亡者1人出た......。」
「怪しい研究の中で働くひとりの男性、彼はどうやら児童養護施設を経営していたらしい。」
「......まさかっ!」
「俺らはその児童養護施設にいたふたりの人物が今の銀の猫になっていると考えている。」
「それと総理は一体何の関係が?」
「どうやら今の総理はその研究を裏で手助けしているらしい。今も昔もな。もしかしたら総理は銀の猫に手を出すか、銀の猫が総理に手を出すかどちらかだろう。」
「......銀の猫を捕らえるチャンスと10年前の事件を解くチャンスを得れるというわけですか。」
「そうだ。頼めるか柳江ちゃん。」
こうして総理を追跡していたのだがなにやら怪しい会話が繰り広げられていた。
『何か変わったことはあったか?』
「......何やら彼らは「男と女」を捕らえているらしいです。詳しくは女だけで男は現在逃走中だそうです。」
『男と女......。もしかしたら銀の猫かもしれん。引き続き頼む。』
「わかりました............っ!!?」
背後から回る腕。その腕は柳江の首元にがっちりと固定されまた手は後ろで瞬時に掴まれた。非常に強い動きで身動きがとれない。
「こんにちわー、柳江ちゃん。」
「お前はっ......!!!」
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