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「......ここか。」
「ほ、本当にここなの?」
「地図はあってるぞ。」
「いやいやいや、嘘でしょ。」
「見るか?地図。」
「貸しなさい!」
「ここが現在地。で、ここが行きてー場所。」
「......。」
「いや、ひっくり返しても同じだから。」
「嘘、でしょ。」
ガクッと崩れる膝を銀ちゃんはわたしの腰に手を回して支える。
「おいおい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫なわけないでしょ!」
こんなに冷静な銀ちゃんを一睨みする。こんなに冷静な態度をとっているのはきっとら最初からここに来ることがわかっていたからだ。
あのかの有名な武道館の前で。
わたしぐらいニュースを見る。世の中の常識を知るためでもあるが私たちの仕事柄は情報収集のため以外ない。
だから知ってる。今日はこの武道館で行われる行事のことを。
「ななななんでここに来ること教えてくれなかったの!?」
「言ったろ日時。それぐらいで分かれよ。」
「分かるわけないでしょォォ!!寝起きで頭ボーッとしてたんだから。」
「それはお前が悪い。」
その次の反抗の言葉が喉につまる。くそ、それは確かにわたしが悪いな。
今までとは違うお洒落をして、私たちは報道陣がいる後ろに立っている。報道陣が撮っているのは有名な国会議員や大女優俳優、そして海外からのお客様など多々。そんな中に私たちは今から入るのだ。
コソコソと話しながら周囲を伺う。待ち合わせの場所でただひたすら人を待っていた。どうやら私たちは裏口から通されるらしい。まあその方が有り難いが。
「しっかしお前化けたな。」
「......どういうことよ。」
さすがに大きなパーティーで普通のメイクではいけない。それに報道陣がいる中だ。警察に顔が割れてる私たちはちょっとでも顔が映れば......ご想像にお任せしよう。
とにかく銀の猫だとバレないようメイクはいつもよりもおしとやかにかつアイラインをきつめに。まるで猫のようなこの瞳。思わず鏡を見ながら笑ってしまった。
「いや、可愛いなと思って。」
「なっ......!!?」
「可愛い可愛いー。」
なでなでと触れられた部分が熱いのは気のせい、絶対気のせいだ。
「......そういう銀ちゃんこそ。」
「あ?俺?」
「な、なんかいつもより、かかかかっこいい。」
銀ちゃんも顔が割れてるためバレないようにしなけらばならない。だけどわたしみたいにがっつりメイクもできない。だからワックスで髪を後ろに上げて目も頑張ってキリッとして。あとついでに帽子も。銀髪目立つからね。
なんだかいつもと違うから調子狂う。
「......それ、反則。馬鹿。」
再びぐしゃっと頭を撫でられる。銀ちゃんの顔を覗こうとしたが上に向けさせないためか撫でる頭に力が入る。
「ちょっ!いたたたたっ!」
「うるせェよばーか!」
「はあああ!?銀ちゃんの方が馬鹿でしょばーか!」
「あぁ!?うるせェ鈍感!!」
「なにをををを!?」
「......あのー、お取り込み中宜しいでしょうか?」
「「あぁん!?」」
「い、いえ!あの、お呼び致しにこちらまで......。」
そう言って怯えながら後ずさりする男。私たちは「やってしまった」そんな顔してお互い見合わせた。
行きましょう、戦場へ
「あはははっ、すみません失礼な真似を。」
「ほ、本当にごめんなさい。」
「いいえこちらこそ、余計な邪魔をしてしまい...。それにしてもお二人共仲が宜しいですね。」
「「なんか言ったか!!?」」
「い、いいえ!!なんでもございませんんん!!」
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